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冬から夏への贈り物 – ユネスコの無形文化遺産に登録された『小千谷縮』

冬になると、女性たちが部屋に集まり黙々と指先を動かす。数ミリ、数センチと、手塩にかけて苧麻糸が紡がれる。反物に織られた布が、早春の晴れた雪原で晒されるまで、丁寧で根気の要る手作業が黙々と進む。

平成に復元された途絶えた伝統

越後上布と小千縮は2009年にユネスコの無形文化遺産に登録された。日本の布では初めての認定であった。その名誉は、自己主張が苦手で慎み深い雪国の人にとって嬉しい評価だったに違いない。しかし、登録までの経緯は悲喜こもごもだったという。本物の小千谷縮と認められる品質の反物生産は、実は一時途絶えていたのだった。

1955年(昭和30年)、越後上布・小千谷縮は国の重要無形文化財に指定されたが、その名を冠することができる品として5つの条件があった。手積した苧麻糸で、絣模様の時は手くびり、そしていざり機で織り、しぼ作りは手湯もみ、足もみ、最後に雪晒しという厳しいものだった。

紡績糸や機械織りへと進んでいた時代、職人が手腕をふるって布をつくるには、着物需要の先細りもあり、難しかった。その後、糸を手で積むことからはじめ、7年の歳月を経て1989年(平成元年)にすべての工程が復元されたのである。もちろん今では、着物用の反物のみならず、仕事に近い繊細な機械を駆使して織られる縮み布というインテリアや現代の洋服にも適応した進化も遂げている。

暮らしの様式も変化し、民俗衣装の着物は冠婚葬祭ですら着られなくなってきたことは事実だ。しかし、何よりも日本の風土に合い、日本人の体系や見目や所作を美しく見せる衣として若い世代にも見直されつつある。