| Traditional & Culture

冬から夏への贈り物 – ユネスコの無形文化遺産に登録された『小千谷縮』

草や木の繊維を一本一本縒りの糸に紡ぎ、その糸を使って布を織る。千数百年もの長い間、気の遠くなるような手間をかけて織られてきたのが「自然布」と呼ばれる織物だ。雪晒しという独特な工程を持つ小千谷縮は、その歴史ある布のひとつ。強靱で肌触りが良く、しかも美しい布には、芸術品の趣さえ感じられる。

幾日もの吹雪の後のことだった。つかの間、ようやく訪れた春の陽光に、青空と白雪原のコントラストがことさら眩しかった。その雪の上に、3ヵ月にわたり丹精こめて糸から織物に仕上げた淡い彩りの反物が、まるで現代アートのインスタレーションように雪原に虹色の列を作っている。

越後上布、小千谷縮の最終行程である雪晒しは、雪が陽光で蒸発してゆく際に生じるオゾンの漂白作用を利用した工法だ。余分な染料が落ち、糸と糸のもつれをほぐし、織物をふんわりと仕上げる先人の知恵である。

「雪中に糸をなし、雪中に織り、雪水に濯ぎ、雪中に晒す。雪ありて縮あり。(中略)雪は縮の親というべし」

雪とともに生きる民衆の姿を、自らの足で取材し絵と文に描ききった越後の塩沢の文人、鈴木牧之(すずきぼくし)が江戸時代に著した「北越雪譜」の中の一文である。ノーベル文学賞を受賞した川端康成が著した「雪国」でも、越後の愛人に会いに来た東京の男が、愛人に見いだした「清潔」な魅力に重ねるような比喩として、そのくだりは使われている。

たしかに越後の人は、豪雪の中で培った粘り強さとともに、雪のように潔白な気質を持っている。一人ではどうしても生きてゆけない豪雪。お互い様という助け合いの気概である。