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きれいな街の理由

新幹線の車内

一日平均88 本の列車を完璧に仕上げる、車内清掃のプロフェッショナル330 名。

日本品質のひとつの到達点

日本の高速鉄道として1964 年10 月1 日に東京〜新大阪間を200km/h で走り始めた東海道新幹線。現在では270km/h の速度で走り続けているが、半世紀近くの間、未だ大きな事故もない。揺れも少なく、乗り心地も快適だ。始発の車内は塵ひとつなく、整然と整えられている。そして、定刻通りの運行。新幹線は、まさに日本品質のひとつの到達点である。

東京駅16番ホームに到着する“のぞみ”を待つ清掃スタッフ。その作業は、車両がホームに到着してから出発するまでの、限られた時間で行われる。車内の快適さを提供し、定刻通りの運行を支えるのが、新幹線メンテナンス東海株式会社のスタッフである。

到着する新幹線をホームに並び待ち受ける、お揃いのピンクのユニフォームに身を包んだスタッフ。各車両のドアの前で、にこやかにお客様を見送り、全員が降り終わると素早く車内に入り、清掃に取りかかる。新幹線が到着し、清掃に与えられた時間はおおよそ12 分。お客様の乗り降りを考えると、実際の作業時間は8 ~9分程度だ。

その短時間での車内清掃は以下の手順で行われる。まず、空き缶やペットボトル、弁当箱など、座席に残っている大きなゴミを回収。リクライニングになっている座席を元の位置に直し、直し終わったら座席の向きを進行方向に変える。背もたれのカバーを外し、新しいものを数枚ずつ座席に配布。それを座席毎にセットし、終わると、箒で座席の小さなゴミを落とし、同時に窓のサンや肘掛けの汚れを雑巾で拭う。ブラインドを定位置にセットし、床を掃き、網棚の奥に忘れ物がないか手鏡でチェック。最後に点検をして完了だ。

この車両内の清掃と同時に、ゴミ箱のゴミの回収。トイレ、洗面所の掃除、喫煙ルームの吸い殻の回収と掃除、グリーン車の毛布や雑誌の整理、そして給水が行われる。

車内清掃で特に気をつけなければならないのが、座席の濡れ。飲み物などがシートにしみ込んでいても、肉眼ではなかなか発見しづらいからだ。そこで開発されたのが、濡れを感知するセンサー付きの箒。これによって、わずかな座席の濡れも見逃すことがなくなった。

素早く、レベルの高い清掃を達成する秘訣について聞くと、「全員が、決まった手順を間違えずに行うことが肝心」

と、総括責任者の阿部紀子さんは話す。全員が、マニュアル通りに作業を行うこと。それを実行すればやり残しはなくなり、スタッフが交代しても、仕上がりの品質が保たれる訳だ。

この清掃作業に関わる人員は1 チーム55 名。内訳は、各車両に2 名、トイレ、洗面所に4 名、喫煙ルームに4 名、グリーン車に+ 3 名。給水とゴミ処理に11名、そして責任者1 名である。この55 名体勢のチームが6チームあり、それぞれが一日15~ 18 本の列車を手掛けている。全体では一日平均88 本というが、お盆などのピーク時には最多で120 本の列車を清掃することもあるという。

実際の作業を眺めると、誰もが無駄な動きひとつなく、その表情が緩むことはない。

真剣さは作業時間に限りがあることの裏返しだが、つまるところ、運行スケジュールに影響を及ぼすということ。単なる時間の制約以上に、大きな責任を負っている訳である。

JR 東海からの指令を受けて、清掃時間の調整やスタッフの配置を行っている阿部さんは、常に列車の正常運行のために気を配っているが、雪などで列車に遅れが出た時のやりくりが大変だと言う。

「どのチームが何番ホームでどのような作業を行っているか、どこで待機しているのかを頭に入れて、到着する列車にどのように割り振れば、運行の遅れを取り戻せるかを瞬時に考え、判断しなければなりません。最大限の緊張感がありますが、やりがいも感じています」

定刻通りに出発して、いつも変わらぬ乗り心地。私たちが何気なく享受しているこの便利さ、快適さを支えているのは、まさにプロフェッショナルな人たちなのである。

車両清掃全般を統括する阿部紀子さん。清掃は運行スケジュールにも影響するため、気が抜けない毎日だ。

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