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きれいな街の理由

通勤電車

日々の清掃に加え、徹底的に清掃される通勤電車の現場とは?

朝から晩まで走り通しの通勤電車。多くの乗客が乗り降りするため、車内が汚れることは確実だ。だが“ こんな電車には5分と乗っていられない” と顔をしかめることは、まずない。ピカピカとは言わないまでも、座席に靴で踏まれた跡は見られず、車内の汚れも気に障るほどではない。

車両の清掃は毎日運行終了後に「小掃」が行われ、そこで大きな汚れは落とされ、ゴミは回収される。それにより、一定レベルの清潔な車両が保たれている。それに加えて定期的に行われるのが、室内清掃と機械清掃である。目的はひとつ。蓄積された汚れをリセットすることだ。

東急電鉄の車両は20 日に1度、検車区内の清掃専用線で室内清掃と車両前面清掃が行われる。

和田三枝子さんはこの仕事を始めて16 年目。一番汚れるのは、人の手が触れるところだと言う。しかも、「ラッシュの時間帯は、お客様が、いたるところを掴むため、広範囲の清掃が必要です」とのこと。皮脂は厄介で、特に冬場は固まって取りづらいそうだ。

清掃作業は車両の間のドアから始め、手すり、ブラインド、窓、壁面へと進む。

それが終わると、次は脚立を使用して高い位置の清掃へと移る。吊り革のベルトと輪の間や、蛍光灯の裏側など指が入らない場所は特製の棒を使用する。手が届かない場所の汚れは少ないのかと思いきや、そうではない。「田園都市線は走る距離も長いうえに、地下も走っています。そのため、窓から埃やチリが入ってくるんです」

そういって和田さんが拭ったタオルは確かに黒ずんでいた。

こうした清掃作業を、各車両の車内に1 人、車体と床は2 両を1 人が受け持つ。細かなところまでしっかり清掃するため、1つの車両にかかる時間はおよそ90 分。一日4つの車両を仕上げるという。

一方、機械清掃は10 日に一度行われる。同じ検車区に設置されている洗浄機を時速5kmで通過する間に、洗浄液が噴霧され、ブラシで車体をこする。汚れはこれで十分落ちるが、ブラシのとどかない前面はデッキブラシを使っての作業。土や埃をきれいに取り払うことで、運転手の視界を良好に保つことが目的だ。

ここまで徹底して清掃を行う理由を聞くと、「駅や電車が清潔であるということは、その沿線に住む人の生活を快適なものにするひとつの要因です」(東急電鉄 広報部 長谷めぐみこ氏)

とのこと。

朝晩の通勤電車は混み合うことから逃れられないもの。それでも不快な思いも少なく利用できるのは、クリーンな車両の提供という、鉄道会社の積極的な取り組みがあってのことなのだ。

10日に一回の割合で行われる機械清掃(写真左)。検車区にある洗浄機で車体側面を丸洗する。車両の前面は20日に1度、手作業で丁寧に洗浄する。(写真右)