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きれいな街の理由

暮らしていると忘れがちだが、多くの人々が行き交うにも関わらず、日本の街はとてもきれいだ。道路や駅はもちろん、電車やバス、タクシーなどの交通機関も総じて清潔である。美しい街を支えている大勢の人たち。その清掃の現場を訪ねた。
写真/高井知哉 取材・文/ JQR 編集部

Meiji Jingu 明治神宮の参道

美しく整然とした神宮を支える「掃き屋さん」と呼ばれる職人たち

掃き清められた参道は、歩いて気持ちの良いもの。数百年の長きに渡り、人々が絶えず行き交い参拝していることに思いが至れば、感慨無量である。

70 万㎡の敷地を持つ明治神宮。その清掃を担っているのは「掃き屋さん」と呼ばれる職人だ。参道や本殿周辺を10 名で分担し、毎朝7 時に決められた持ち場に向かう。

吉田良稲さんは、この仕事に就いて9 年目。持ち場は2~3年毎に変わるため、すでに3 ヵ所の清掃を経験した。「本殿の清掃もしましたが、私は参道が好きですね。緑に囲まれているので、とても気持ちがいいんです」

参道に落ちているもののほとんどは落ち葉だ。17 万本ほどの樹木から、万遍なく敷地に落ちる大量の葉。一網打尽にする仕掛けは、残念ながらない。まず参道の端の落ち葉をブロアーを使い、参道に掻き出す。それを箒で寄せ集め、ちり取りにまとめる。同時に玉砂利をならす。

ここで吉田さんが使う箒は、身丈以上もあるもの。柄が長ければ、広い範囲をカバーできる。だが、操るのは難しい。「掃く力が弱いと落ち葉が残り、力を入れすぎると玉砂利に箒が引っ掛かってしまいます。長いので、バランスを取るのが難しいですね」

仕事を始めて最初にするのが、この箒作り。意外と難しいのが柄の太さだという。太すぎれば握りづらく、細すぎるとしなってしまい、使い物にならない。落ち葉を寄せる箒の穂も自分で取り付けるが、一回使うだけですり減り、特に雨の日はその減り方が大きい。穂の付け具合で、作業の効率が変わってくるため、毎日のメンテナンスが欠かせないのだ。

黙々と作業をしながら、何を想うのか。そう聞くと、吉田さんは、「参拝に来る人たちのこと」と、言葉短に答えてくれた。

緑が深く、鳥の囀りが木霊する明治神宮。吉田さんが掃き清めた参道には、清々しい空気が満ちていた。

明治神宮の清掃を始めて9 年になる吉田良稲さん。参道の掃除は、とても気持ちがいい仕事だと話す。
自分の背丈よりも長い箒。扱いやすい太さ、長さのものを工夫し、自作する。
使用するのは、広範囲を掃く長箒と、ピンポイントで落ち葉を集める小箒。
現場では、落ち葉の散り具合と風の向きなどを考え、掃く手順を考える。
長箒を大きく弧を描くように操り、広範囲の落ち葉を集める。力任せでは、落ち葉を押しつけるだけで集まらない。