| JQR Interview

クロード・ガニオン監督 自分の言動を過大評価せず 人生の楽しみを味わう

私は、社会の決めつけを 覆すのが好きだ

 美しい女性は、人が自分のことをどう思っているか分かっている。彼女は、自分がどこかの場所に入ってゆくと視線が自分に集まることを意識している。私は自分の映画作品で、人の外見に大いに注目してきた。若いころ、私はアイスホッケーをやっていたが、名門校に通っていたのでインテリとみなされていた。ところが、学校ではスポーツマンだからという理由で「ジョック(体育会系)」とみなされていた。どんなイメージを抱くかで、人は他人に色々なレッテルを貼る、という事実に私は昔も今も驚きを覚える。私の初期の映画の一つに、リシャール・ニケット主演の「ラローズ、ピエロ、ラ・リュス」という作品がある。私は“リッチー(リシャール・ニケット)”をかなり前から知っていた。背が低くて肥満体で、サスペンダーでズボンを吊っており、猫背だった。13歳の頃にはすでに中年男のように見えていた。一方、私は学校でアスリートとして鳴らし、いささか喧嘩腰で、皆に怖れられていた。その後、私は日本とケベックを行き来することになったが、ケベックに戻っていた折にリシャールから「僕がゲイなのは気に障るかい?」という驚くべき質問を受けた。私の体つきから判断して、私のことをホモ嫌いのマッチョだとずっと信じこんでいたのだ。世間は人の外見的イメージによって、その人の心の広さまで測っている。この事は、私の映画に大きな影響を与えた。キャスティングの際、私はこうした第一印象を重視する、その次に社会の決めつけを覆すのが好きだ。

「keiko」で成功したが、オファーは焼き直しばかり

 ヒッチハイクの旅を終えた後、映画を作りたいのなら、本の中だけではなく実生活の中で人間をもっと知る必要がある、人々と出会い、彼らの日常の現実を発見する必要がある、と悟った。そして、日本は私にとって最良の選択に違いない、と強く思った。島国であり、山がある……。カナダは新しい国であるのに対して、日本には古い歴史がある、そう考えると自分の立ち位置が良く分かった。そんな訳で、私は70年代にこの国にやって来た。最初は半年日本にいて、その後は南下してインドネシアに渡り、次に北上してヨーロッパに行く予定だった。当時の風潮にならい、ちょっとした流浪の旅に出たつもりだった。しかし6か月経った時点で、まだ日本の何ものも理解できていなかった。その当時、日本で暮らす外国人はごくわずかだった。今でも覚えているが、京都で外国人を見かけると、通りを渡って握手を求め、電話番号を交換したものだ。ピース&ラブが合言葉の、幸福感いっぱいで刺激的な時代だった。

 撮影現場を一歩出ると非常に内気となり、店のレジで何かを買い求めるときもドギマギしてしまう私だから、日本人の内気なところは大いに気に入った。とは言え、自分には全く知識が無い日本の古い文化には戸惑った。それはフラストレーションというより、私にとっては刺激であった。私は、自分のこれまでの経験を絶えず問い直し、新たな考え方、新たな美学を発見しようと努めた。だが、「Keiko」で成功を勝ち得た頃、私は自分が現状にずるずると浸って、居心地の良さを覚えている、と感じた。子供が二人生まれ、小市民的な家族生活が始まろうとしていた。仕事の面では、急に沢山のオファーが来るようになった。しかし、誰もが「Keiko」のような作品を作って欲しいといった、これまでの仕事の焼き直しのオファーばかりで、私は興味を持てなかった。そういった状況に私はパニックを覚え、ケベックに戻りたいとさえ思った。

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