2020年への東京物語 [第1回]

江戸の大名庭園

その美しき庭を歩く

| 大名庭園

手入れに励む庭師の日々

樹木と草花は、伸びる! 落ちる! そして腐る!

木村さんにお願いして庭師の正装を撮影。背中側の腰に作業道具を下げている。

 いつ訪れても、整然とした景色が広がる大名庭園。その美しい景観を保つため、「作業は待ったなし。日々追われています」と、六義園の庭師、根本浩一さん。
 例えば、ツツジは花が終わってからの1ヵ月に1000本を刈り込むと言う。もちろん、マツのみどり摘みや思わぬ園路の補修なども同時進行だ。まさに、自然が相手の競争なのである。
 秋冬はもちろん、年間を通して落ちる木々の葉も厄介だ。風に舞い池や川に落ちて底に堆積すると水を濁らせ、とくに暑い時期には臭いの原因になる。「来て頂いたお客様を悪臭で迎えたくないですから」と、小石川後楽園の庭師、木村央さんのチームは、毎月川の清掃を欠かさない。
 このように、各大名庭園にはそれぞれ専門の庭師が常駐し、庭の手入れ、管理を行っている。庭園内には樹齢が数百年になる樹木や美しい季節の花を咲かせる草本があり、それらを健全に維持する目配りも欠かせない。台風や雪などの天候や、温暖化による病害虫の発生への対処など、庭師たちは休むことを知らない季節を相手に、奮闘する毎日なのです。

庭師の作業着は、作業がしやすい伝統的なもの。下着の上に腹がポケットになっている腹掛けと、動きやすいようにゆとりを持たせつつ、足元が草本で絡まぬように膝下を絞った股引。足下の感覚が伝わり、かつ滑らない紺色の足袋を履き半纏を羽織る。そして、手首には手甲を巻く。
「昔は、『手甲をつけてないと手間を払えない』と言われました。手首はケガしやすかったのでしょう」と木村さん。



手首をしっかり守る手甲。布でできている。

園の手入れ その1 水辺の清掃

時期:月1回。夏場は月に2〜3回

川底に付着しているアオミドロ(写真左)や落ち葉を、熊手の爪を使って回収除去し、その後川床を攪拌して細かな汚れを流す作業(写真右)を繰り返す。8人がかりで半日の清掃だ。

東京は雨が多いにも関わらず、庭園に使う水を確保するのは難しく、小石川後楽園では井戸水を汲み上げ使っている。川の形状の違いにより、水の流れに変化が生じ、水深が浅く緩やかな流れの場所は水温も上がり川が汚れるため、川床清掃が欠かせない。真冬でも毎月行う大事な作業の一つ。


庭園の手入れ その2 みどり摘み

時期:毎年4月〜5月下旬

マツの新芽が一斉に伸びる春(写真左上)。どれを残すか考え、ひとつひとつ新芽を手で摘む(写真左)。作業が終わると、すっきり整った松が現れる。

春になると、マツの新芽(みどり)がひとつの枝から5〜10本伸びる。それらは樹形を崩すため、柔らかなうちに手で摘み取る。「樹形を見定め、どのような形に発展させるかを考えます」と、六義園の庭師、根本浩一さん。芽の伸びる方向を見極め、どれを残しどれを摘むかを判断し、1本のマツを2〜3時間かけて仕上げる。


庭園の手入れ その3 刈り込み

時期:毎年4月下旬〜6月

玉もの樹形の手入れでは刈り込み鋏を使用。一方の手を支えとし、もう一方の手を動かし切るのがコツ。美しく仕上げると、整った風景が現れる。

生垣など人工的な仕立てものの手入れでは刈り込みが必要だ。とくにツツジなどの樹木は大きく育てず、周囲とのバランスを取りながら、美しく刈り込むことが肝心。その作業には時期があり、例えば、ツツジは花が終わってから1ヵ月ほどで来春の花芽が出る。その花芽を刈り込まないように、1ヵ月間が勝負。


庭園の手入れ その4 もみあげ

時期:毎年10月〜3月

葉が伸びたマツはシルエットがぼやけてしまう(写真右上)。不要な枝や芽を剪定し(写真左上)、古い葉を手で落とす(写真左)。

生垣など人工的なマツは日射しを好むため、とくに冬にかけては混んだ枝や不要な葉を落とし、木全体に日が当たるように手を入れる。まず、不要な枝を見定めて剪定し、続けて色が変わり始めた古葉や枯れた葉を取り除くもみあげ作業を行う。一枝ごとの枝葉の状況確認が必要だ。繊細で根気の要る作業で、大きな松の手入れはひと月もかかる。仕立てものの手入れでは刈り込みが必要だ。とくにツツジなどの樹木は大きく育てず、周囲とのバランスを取りながら、美しく刈り込むことが肝心。その作業には時期があり、例えば、ツツジは花が終わってから1ヵ月ほどで来春の花芽が出る。その花芽を刈り込まないように、1ヵ月間が勝負。


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