旅行作家 山口由美さんに聞いた – 日本のいい宿、いいホテル[最終回] – 鄙の座(ひなのざ)

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Q.北海道の雄大な自然を満喫できる宿を教えてください。(飲食店経営 48歳男性)

節電もあり、今年の夏の東京はとても暑そうですね。なので休暇は東京から脱出して、涼しい北海道でと決めています。自然を楽しみながらゆっくりできる、北海道でおすすめの宿は何処ですか?

 

A.それなら鄙の座がぴったりですね。(山口)

北海道の阿寒湖温泉にある鄙の座は、日本の先住民族、アイヌのデザインや手仕事を現代的にアレンジしたモダンな宿です。伝統工芸の木彫りが配されたラウンジから望む阿寒湖は一枚の絵のよう。阿寒湖といえばマリモが有名ですが、温泉街を除く湖畔はすべて原生林。北海道の大自然も堪能できますよ。

 

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和室・リビング・露天風呂がひとつながりに阿寒湖を望む『天の座スイート』。湖畔にむかって開けた眺望は、素晴らしいのひとこと。

 

雄大な自然には美味しい料理がよく似合う

鄙の座のエントランスは、ドラマチックな仕掛けのギャラリーにまず出迎えられる。正面、まず目に入るのは、大きく翼を広げベンチの上に留まるシマフクロウの姿。今にも飛び立ちそうだ。聞くと、地元の職人たちの手による木彫りだという。そして、玄関に誘われる。一見、正統派の日本旅館。でも、畳敷きのその奥に、木彫りの家具を効果的に配したるエキゾティックな空間が、阿寒湖の絶景を背景に佇んでいる。館内には、野生動物の木彫りがあちらこちらに。説明をしてくれた宿のスタッフのユニホームは、アイヌのモチーフをデザインに取り入れたもの。館内からして北海道のエッセンスがいっぱいだ。

通された部屋は、阿寒湖が一望できるとても贅沢な部屋。「鄙の座」の客室は中国映画『狙った恋の落とし方』のロケで使われ、中国で北海道旅行ブームをまきおこした舞台でもある。部屋付の檜の露天風呂を浴びる。対岸に広がるのは人間の住まない原生林。美しい湖畔を眺め湯に浸かっていると、体に溜まっていた疲れが昇華していくようだ。

夕食の前にバーラウンジに立ち寄った。巨大な天然木のカウンターは、鋭い剣先のようなアイヌ模様が描かれている。真空管アンプから流れるスローな音楽に耳を傾けながら、沈む夕陽を眺めていた。

夕食は料理茶屋「ひな」の個室で頂く。北海道の大地と海が育んだ美味が季節感豊かに次々と登場。お酒も美味しい上に、新鮮で滋味な味わいを止めるわけにはいかない。今日だけ摂取カロリーを忘れることにした。

翌日は朝食のあと、阿寒湖のほとりにめぐらされた阿寒湖自然探勝路を散策した。宿から程近い「ボッケ」は、大地から温泉がぶくぶくと噴出している。ここは、古くからアイヌの人たちが暮らした場所でもあるという。太陽の光はキラキラと眩しいが、木々の間を通り抜ける風は爽やかで、瑞々しい葉を飽きることなく揺らしていた。

 

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部屋付きの露天風呂は源泉掛け流し。檜風呂でゆったりと身体を温めた後は、原生林を見渡すテラスに腰掛けて、山々の清冽な空気に涼むのもいい。 釧路や網走でその日のうちに仕入れた海鮮が食卓に並ぶ。エゾシカ肉のたたきや、阿寒湖産のワカサギの天ぷらなど、地産の食材を生かした料理は美味。

 

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ベッドルームは湖畔に面したリビングや和室から独立している。障子で隔てられた広々とした寝室が、プライベートな空間を確保。家族連れにもおすすめだ。

 

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リスニングルームでは、木工職人による手造りのウッドスピーカー「JBLパラゴン」の暖かい音色が愉しめる。湖畔を望むラウンジには、阿寒湖やアイヌにゆかりの書籍を集めた書庫もある。

 

あかん鶴雅別荘 鄙の座(ひなのざ)
北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉2丁目8番1号
0154-67-5500
1泊2食1名¥29000~
http://www.hinanoza.com/

 

山口由美(やまぐち ゆみ)
旅行作家。著書に『帝国ホテル・ライト館の謎』(集英社新書)、『消えた宿泊名簿〜ホテルが語る戦争の記憶』(新潮社)、『旅の窓から』(千早書房)、ほか。

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