越後岩室温泉 髙島屋 〜泊まれる料亭〜 国登録有形文化財

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また行きたい宿を探して

初めてでも懐かしさを感じる、越後岩室温泉の旅館。
由緒ある建物と地元の食材を使った会席料理。
そして気さくなおもてなし。
心から寛げる宿で過ごすひと時は、実に贅沢なものである。

撮影/飯田裕子 文/中月隼人

 越後岩室温泉にある旅館、髙島屋を訪れる著名人は多い。
「何もかも、ちょうどいい」
 一晩を過ごした武田鉄矢さんが、帰りしなにこう口にしたという。越後の人々にとって髙島屋は言わずと知れた庄屋の宿である。だが遠方の、しかも旅に慣れた人々をも虜にしている理由は何処にあるのだろうか?

takas地元の人たちからも慕われる、気さくな女将が旅人を温かく迎える。

大坂夏の陣で敗れて

 髙島屋の先祖は、越後から遠く西に位置する近江国高島郡田中郷の武士であった。当主の髙島秀高は1615年の大坂夏の陣に豊臣方として参戦したが、戦に敗れた。そのため、その子、佐五右衛門正髙は郷里から逃れ、越前を経て岩室に定住し、鍛冶師になったという。
 江戸時代には庄屋として村政を担い、1878(明治11)年には、明治天皇が北陸巡幸のおりに髙島屋で休息されている。その本館は、260年前の江戸時代に造られた屋敷を利用したものだ。
 広い表玄関を入ると正面に帳場がある。靴を脱いであがると左手の居間に自然と誘われる。ゆっくり時を刻む柱時計。囲炉裏が置かれ、天井には豪雪に耐える太い梁が通っている。広すぎず、かと言って狭くもない。心の奥底から、ほっとする気分がこみ上げてくる。

棋士が勝負する部屋

 客室はいずれも落ち着いた和風の設えだ。露天風呂がある部屋が3室、古民家風の離れもある。
 竹林を眺める特別室「常磐」は「対局の間」とも呼ばれ、将棋や囲碁の対局に度々利用されている。今年(2014年)も7月15日に棋聖戦の第4局が行われる予定だったが、羽生棋聖が第1局から3連勝したため、対局は行われなかった。
 大浴場には岩室温泉から湯が引かれている。実はこの温泉を発見したのも髙島屋の先祖と言う。それは不思議な言い伝えである。
 1713(正徳3)年のこと、髙島庄左衛門の枕元に白髪の老翁が現れ、そのお告げ通りに岩室の地を探すと、一羽の傷ついた雁が泉流に浴して怪我を癒していたという。そのため、岩室温泉は別名「霊雁の湯」とも呼ばれているのである。

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料理とお酒の一夜

 越後・新潟は、言わずと知れた米所。しかも豊かな漁場が近く、新鮮な魚介が手に入る。
 そんな旬の食材を吟味し、料理長が季節の移ろいに合わせて献立を考える。酒菜に始まり、お椀、お造り、焼き物、煮物、油物という会席が定番だ。華やかで贅を尽くした料理に、地元酒蔵のお酒を合わせると、一皿一皿がまた格別な味わいとなるから不思議である。故に髙島屋は「泊まれる料亭」として知られ、料理を楽しみに来る客も多い

何もかも、ちょうどいい

 隅々まで磨かれた高級旅館の凛とした佇まいは、ひとつの憧れに違いない。しかし、ともすればかえって気を遣ってしまい、落ち着けないこともある。日常を離れ、寛ぐことが一番と考えるなら、髙島屋は実に貴重な宿と言える。
 しかも、髙島屋は江戸時代からこの地の顔役だ。気さくで面倒見のいい女将と番頭が、先祖代々引き継いだネットワークを使い、旅人たちの求めに応じてくれる。それはそれは、嬉しいおもてなしの宿なのである。

Untitled-5新潟は風光明媚な土地。雪解け後には田園に春の花が咲き競う。夏の空の青さと夜の花火、秋は山々の紅葉が美しい。そして、冬には雪で閉ざされた、水墨画のような世界が愉しめる。

Untitled-6料理長、金子 靖が新潟の食材を吟味し、提供する会席料理のコース(写真左)。別注で、ノドグロの塩釜焼き(写真中)やふぐ刺し(11月中旬〜2月頃まで)、和牛のステーキなども味わえる。

DATA
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高志の宿 髙島屋
料金 ¥19590〜¥44500(1泊2食/1名/税込)
住所 新潟県新潟市西蒲区岩室温泉678甲
電話 0256-82-2001
http://takasimaya.co.jp

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