年に一度の巨人の行進 大隅町の弥五郎どん祭り

お祭り列島見て歩き Vol.7

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巨大な人形が町を練り歩く

身長4m以上もある巨大な人形がノッシノッシと練り歩くお祭りがある。鹿児島県曽於市大隅町の「弥五郎どん祭り」だ。十数年前、某旅行雑誌で写真を見て以来、太い眉毛にギョロ目の恐ろしくも愛嬌のある顔と、威風堂々としながらも大きすぎるが故に物悲しさが漂うその風貌に心を奪われ、一度この目で見たいとずっとずっと思い続けてきた。そして今回ようやくその夢がかなう運びとなったのだ。

そもそも弥五郎どんとはいったい何者なのか?この答えには諸説ある。大和朝廷に抵抗して敗れた隼人族の首領という説や、それとは真逆の朝廷側の武内宿禰(たけのうちのすくね)とする説もある。制圧する側とされる側の解釈の違いだろうか。よくある話と言えばそれまでだが。

祭り当日の午前1時過ぎ、宿泊していた旅館の部屋で、昨晩飲んだ芋焼酎の夢を見ながら気持ちよく寝ていると、突然前の通りからドンドンという太鼓の音とともに「弥五郎どんが起きっど~」という声が聞こえてきた。これから神社にて弥五郎どんを組み立てる「起こし神事」が始まるのを伝えるふれ太鼓だ。眠い目をこすりつつ旅館を出て神社へ向かう。南国とはいえ晩秋の丑三つ時はやっぱり寒く、辛抱たまらず自販機で缶コーヒーを買う。

神社に着くと、社殿の中では揃いの法被を着た若い衆が、悪戦苦闘しながら弥五郎どんに着物を着せている真最中。これも大事な神事だそうだ。竹で編んだ巨大な筒のようなものが、作業が進むにつれ段々と人の形に見えてくる。そしてお面を付けたその瞬間、確かに何かが宿ったようにギョロ目が少し動いたような、そんな気がした。寝ぼけていただけかもしれないが。

02

午前4時、社殿の外に運び出された弥五郎どんを台車に乗せ、皆で引っぱり起こす「弥五郎どん起こし」が始まる。これに参加すると身体が強くなり運気が益々上昇すると言われているそうで、いつの間にやら境内には大勢の老若男女が集まっている。若い衆の合図で綱を引くと、群青色の夜空をバックにすっくと起き上がる弥五郎どん。「うぉ~」「起きた~」「大きい~」などの歓声があがる。でもちょっと待った。わずか1~2秒で起き上がってしまった弥五郎どん。ここ一番大事なところでしょ。もう少し引っ張っていたかったな~。

ここまでを前半とするならば、後半は町を練り歩く「浜下り」だ。午後1時、神社の坂を降りて鳥居をくぐった弥五郎どん。群衆を見下ろすようにいったん立ち止まった後 、子どもたちに引かれて動き出す。肩の上に男が一人乗り、手に持った棒で電線をよけている。

昔は実際に電線を切断することもあったという。薩摩隼人は豪快だ。男が動くたび巨体が左右に揺れ、本当に歩いているように見える。道路は人であふれ、年に一度の巨人の行進に大興奮している。弥五郎どんの正体が誰であれ、様々な人たちの鎮魂や畏敬、その他諸々の思いをすべて飲み込んでどんどん大きくなっていったのは間違いなさそうだ。

先導している太鼓の音が遠くなり、威風堂々としながらも、どこか物悲しい大きな背中が揺れながら小さくなっていった。

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【弥五郎どん祭り】

毎年11月3日に開催する約900年の伝統を持つ県下三大祭りのひとつ。高さ約5m以上、 4.2mと2.85mの大小の刀を腰に帯んだ「弥五郎どん」と呼ばれる巨大な人形が市中を練り歩く。弥五郎どんの由来は、隼人族の領主という説や、6代の天皇に仕えた武内宿禰であるとする説などがあるが、現在は五穀豊穣の祈願や人々を守ってくれる守護神として尊崇されている。祭りの日は午前1時から岩川八幡神社で弥五郎どんが制作され、午後1時から浜下り、市中パレードが行われる。

【アクセス】

●公共交通機関を利用
「宮崎空港」から宮崎空港線バスで「都城駅」バス停で下車。志布志方面行きのバスへ乗り換え、「岩川」バス停で下車、そこから徒歩15分
●車を利用
宮崎自動車道「都城IC.」 から国道10号線へ進み約20分

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