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Quality Review – 東京都大田区 下町ボブスレー

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国産ボブスレー第一号
受注生産のみ価格:約1,000万円

 

東京都大田区 下町ボブスレー

 

短期間・低コストで完成した日本製ボブスレー第一号は下町の技術が結集した賜物

東京・大田区には4 万ほどの小さな町工場があるが、その多くは自動車や新幹線、ハイテク製品のメーカーに部品を納めている製造業者である。大田区はクオリティーの高いモノ作りの揺りかごだ。これを誇らしく思う小杉聡史氏は、区内製造業者のノウハウを結集して、先進的な製造技術と高い品質を世界に知らしめる製品を開発する、というアイデアを温めていた。注目を集めるには、日本でまだ作られたことのないもの。スポーツの国際大会に登場するような製品であるべきだと。それは何か?

ある時閃いたのが、日本ではあまり認知度のない「ボブスレー」だった。

そこで小杉氏は区内の製造業者に持ちかけた。だが、返ってきたのは「そりゃ何だ?」という判を押した反応ばかり。しかし「共同開発」というアイデアは、皆の心を躍らせるものがあり、結局32もの企業が結集したのである。

何の知識も無い中で知恵をひねり、何とか作れるだろうとの結論に達してから、小杉氏は長野県のあるチームにプレゼンを行った。見事受注となったが、条件は短期間、かつ研究開発費を含めて3千万円の予算というものだった。

地元に帰るとすぐに製作に取りかかった。国際ボブスレー・トボガニング連盟(FIBT)が定める厳格な設計基準に則り、かつオリンピック経験者の脇田寿雄氏の意見を参考に、作業は進められた。そして4 週間という記録的な短期間で、国産のボブスレーが誕生したのである。

この国産第一号に乗った女子チームの二人は、すぐにこのマシンが、これまでのマシンとは全く異なるパフォーマンスを持っていることに気が付いた。そして二人は長野で行われた日本選手権で見事優勝し、自己ベストを更新した。

大会期間中、他の競技者やFIBT の関係者も、このマシンをひと目見るなり、国際大会に十分通用すると評価したのである。

 

誕生した氷上のF1 マシン

一般的なボブスレーのマシンの長さは320cm、重量は185Kg。だが、超軽量カーボンコンポジット(炭素繊維強化プラスチック)で作ったボディの重さはわずか20Kg。空気力学に基づいたその角張った形状は、他に類を見ないユニークなものであり、カーボンコンポジットのスペシャリスト「童夢カーボンマジック社」がF1 などのカーレースのマシンを手掛けることで培ったノウハウが活かされている。内部のスチール製フレームは、プロジェクトに参加している32 社が特別に設計した120 ものパーツを入念に組み立てたもの。舵取り装置と制御装置は、競技者の要請に応じて精密に調整された。手作業で製造された様々なバネ類は、あらゆる種類の振動を吸収するように、ひとつひとつテストをして調整されている。内面を競技者の身体にぴったりと合わせるため、試乗の際には調整のためのクッション装置がその場で手造りされた。

ボブスレーは、滑降速度が140Km/h に達するとても危険な競技だ。「氷上のF1」と呼ばれる所以である。この下町の橇そりは約1千万円(約10万米ドル)で受注生産されることになった。

大田区の町工場の技術により、日本は2014 年のソチ冬季オリンピックを始めとする国際大会の重要なプレーヤーとなるだろう。第2 号以降のモデルの設計も着々と進んでいる。ボブスレー競技から目が離せなくなりそうだ。

 

ボブスレーのフレームは、大田区の企業32社が特別に設計したパーツを組み立てて作られた。

 

●お問い合わせ先/http://bobsleigh.jp

撮影/高井知哉 取材・文/ JQR 編集部

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