フランソワ・トラウシュ – GE キャピタル・リアルエステート アジアパシフィックCEOアジアパシフィックCEO

SPECIAL INTERVIEW

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Interview 1

 

未だに未開発が止まない東京
日本の不動産業界の予想を裏切る成長!

シックでモダンな多機能オフィス。この部屋を見るだけで、GEキャピタル・リアルエステートとそのアジアパシフィックCEOが人間的ぬくもりをいかに大切にしているかを感じ取ることができる。日本通のフランソワ・トラウシュは、若い頃に奨学金を得て10カ月、東京で過ごしたことがあり、その時に日本に魅せられた。そのため、パリのGE不動産部門におけるキャリアが順風満帆となり、アジア地域の責任者のポストを打診された折には、配偶者や子供たちをなんなく説得して一家で日本に赴任した。出張の合間を縫って取材に応じてくれたトラウシュは、日本の不動産市場をどのようにとらえているのかを語ってくれた。

「東京の不動産市場の第一の特性は、その規模です。 首都圏の人口は3千万と大きく、赴任後半年で全てを把握することはできません。複雑で難しいマーケットですが、このように一筋縄でゆかぬところが魅力でもあります。このマーケットの変化、トレンド、方向性を理解するには多くの時間を要します。15年前、新宿は人気のある地区でしたが、現在はもはや成長の勢いが感じられず、人々の足は、国際空港となった羽田に近い品川へと向かっています。ヨーロッパの都市の姿は固定化しており、どこに行けば何があるかは決まっているのに対して、再建が始まってから50~60年しか経ていない東京には、いまだに多くの動きがあります。この点に私はいまだに驚きを覚えます。

東京は25年前よりも美しくなった

25年前に来日した当時、円は強い通貨であり、バブル経済に沸き……と状況は今とはまったく異なりました。隔世の感があります。しかし、都市としての東京はあの頃よりさらに美しくなったと思います。インフラの整備が進み、美しいビルも増え、大規模な都市計画がいくつも実現しました…ひとことで言うなら、大きなパラドックスがあるのです。日本は成長を停止したまま20年間を過ごしてきたとの指摘がある一方で、20年間の停滞の結果が今日の東京の姿であるならば、多くの国が20年間の停滞も悪くはないと考えるのではないか、と私は思う。それほど東京は美しくなったのです!

東京は雑然とした都市ですが、アークヒルズや六本木ヒルズ、ミッドタウンを手掛けた森ビルを始めとする幾つかの開発業者は手法を変え、美観に配慮してビルを建設するようになりました。オフィス、店舗、ホテルを組み合わせたプロジェクトが日の目を見ました。この国においては比較的新しい現象でした。その良い例は丸の内地区です。20年前はオフィスしかありませんでしたが、現在では週末でさえも大勢の人で賑わっています。東京を知らない人が東京と聞いて連想するのは、高層ビル、三層の高速道路、交通量の多さ、メガロポリス、近隣県を合わせて3千万の人口、コンクリートだらけの無味乾燥、深刻な大気汚染です。私は、際立ってロマンチック、静かな都会だと見なされているパリからやってきたのですが、実のところ、パリは騒々しくて、車で混雑し、大気汚染がひどい都会です。そんなパリと比べて、東京は正反対! 村々の集まり、と言ってもよいくらいで、大気汚染はまったく存在しないし、欧州の幾つかの都会よりもずっと静かです。確かに、三層の高速道路は存在しますが、そこから100メートルも離れると小さな家が軒を連ね、村さながらの雰囲気の中で暮らすことができます。さらに、高速道を走る車の音は聞えませんので、静かな環境が保たれています。これこそ東京が持っている二面性です。

 

Interview 2

 

東京は人間的

仕事柄、私はしばしば中国に行きます。あの国では信じられないほどの変化が進行していますが、都市はどれも同じような計画に基づいて整備され、やや画一的です。雑然としたところがある東京は、いくつかの面でより人間的であり、多様性と奥行きがあります。成長著しく、プロジェクトが目白押しの中国と比べ、ここ東京では朝刊を読むと、これからの50年で人口が大幅に減少するだの、誰も住んでいないアパートやマンションがどれだけある、といった話が載っています。しかし、そういった話は間違っています。日本のパラドックスは、無気力状態にあるにもかかわらず、大きく成長を遂げている『スポット』が存在することです。そうしたスポットを探し当てると、大きなビジネスチャンスに巡り合います。さらに、日本は非常に流動性が高い大きな市場なので、資金調達コストがとても低い。金利1% で資金調達が可能で、5%の収益が得られる住居に投資することができます。4%の収益が得られる国は世界でも希です。

実のところ、東京の過密化は続いています。すなわち、日本の人口の減少で犠牲を払っているのは農村部であり、大都市への人口集中は続いているのです。東京の『世帯』数は増加しています。独身者がこれまでよりずっと多くなっているからです。そのため、小ぶりなマンション住居の需要は高まっています。私たちが東京、大阪、福岡、名古屋でワンルームマンションの分野に参入している理由もそこにあります。私たちはまた、中規模オフィスビルの分野でも精力的に動いています。ワンフロア300~500㎡で5~7階のビル、というのが平均的な姿です。そうしたビルのうちには、現在の耐震基準を満たさぬものもあり、借り手(在京企業の80%は、従業員約20名の中小企業)は昨年の地震をきっかけに移転を決意しました。最新の耐震基準に適合しており、優れたエネルギーシステムを備えている建物に移ろう、というのです。私たちはこうした顧客を引き付けるため、外見は少々古臭いかもしれないが良質な建物に投資し、現代のテイストに合うように手直しします。私は、持続可能な開発と新エネルギーシステムに狙いを定めています。政府も、これに多額の補助金を与えようとしています。私たちは借り手と手を携え、借り手にとって光熱費削減につながる設備の刷新に努めています。新エネルギーシステムは成長中の分野であり、日本はその推進に邁進するでしょう。日本人は、こうと一旦決めたら、とことん追求しますから。

外国企業であることは特に問題になりません。私たちが日本に進出して15年になりますが、実力を発揮して認められ、現在はすっかり受け入れられています。とは言え、これからも私たちが決してできないこともあります。例えば、丸の内の不動産を購入することはできないでしょう。そういったオペレーションは日本企業の専売特許となっています。当然ながら、こうした現象はアジアや欧州の各地で見られます。日本の特殊性は、何があろうと決して自分が所有する建物を売ろうとしない人がいる、という点です。中国人の方が「トレーダー」のメンタリティーが強く、利益が得られるのなら売却するでしょう。帰属や所有に対するこだわりが日本では強いのですね。ですから私たちは、自分たちのビジネスを展開できるセグメントを選んで進出しなければなりません。

言葉は一番困難な障壁

外国人社長である私にとって一番難しいのは、言葉の障壁です。従って、クライアントとのおつきあいは日本人スタッフに任せています。スタッフが私の出動を求めるのは通常、詫びを入れるために私が出向かねばならない場合です。これは日本独特の風習かもしれませんが、当然のことですし、それこそが私の役割です。幸い、こんな要請は滅多にありません。私がそうした要請に応じるのは、私は信頼できる上司であり、部下を見捨てはしない、と感じてもらいたいからです。 日本では、メンツを失えば何年もマーケットからの退場を余儀なくされることがあり得ます。クライアントと直接関係を築けないのは私にとってやや物足りませんが、そうすることに何らの付加価値も見出せませんので、自分が前面に出ようとはしないのです。

日本人は建てるのが好き

高速道路であれ、建物であれ、日本では非常に建設業が盛んです。 建設業をフル回転させようとするので、スクラップ・アンド・ビルドに躊躇いがありません。恐らくは、日本では土地が非常に高いためでしょう。土地の価格は投資金額の70%を占めており、建物の割合はたったの30%なので、取り壊して再建する贅沢が許されるのです。それにしても、日本人は建てるのが好きですね。建てることに経済的利点が見いだせないような時勢であろうと。ここ日本では、金銭面で有意義だとの裏付けがすべてのプロジェクトにあるわけではなく、アングロサクソン流の投資リターンチェックに合格しないプロジェクトもあると思いますよ。メンタリティーが違うのです。

 

Interview 3

 

日本人スタップと一緒だと笑う機会が多い

スタッフ管理の経験をは多く積んでいる私ですが、フランスと比べてここでは苦労が少ないです。当然のことですが、同一企業内だと社内コードの半分は共通しています。しかし残りの半分は非常に異なります。子どもっぽい冗談も含め、日本人スタッフは職場でも遠慮せずにユーモアをふりまくので、パリにいた頃と比べて私はここ日本で大いに笑っています。不動産業に集まってくるのは、型にはまるのは御免という人材であり、 出身大学もさまざま。私たちは、英語を話す能力のある若者や、伝統的に男性中心主義である他企業でキャリアの限界を感じた才能ある女性を採用しています。

日本の不動産マーケットは透明性に欠ける

これほど練り上げられたマーケットにも関わらず、情報の取得がこれほどまでに難しいことに、私はいつも驚きを覚えています。カナダでビルを購入する場合、周辺のビル10棟が売却された時の価格、周辺ビルの持ち主や借り手のプロフィール、賃料などを知ることは簡単です。日本では、これが非常に難しい。アングロサクソン系の投資家が求めるこの手の情報を入手するには大変な苦労を払わなければなりません。アングロサクソンにとって、入手できるのが当たり前、あって当然の「データ」だからです。日本の不動産マーケットはこれほどまでに高度化しているのに、意外と透明性に欠けているのです。別の見方をすると、新規参入からマーケットを保護しているとも言えます。パリやニューヨークから乗りこんで、即座にビルを買い取るなんてことはできないのです。

私の十代の子どもたちは自由を味わっている……日本の環境のおかげで

東京の信じがたいもう一つの側面、それは交通システムです。私の14歳と16歳の子どもたちにとって、東京で生活することは素晴らしい体験です。彼らは、日本の環境の中で十代の若者としての自由を味わっています。犯罪の危険を恐れずに公共交通機関で移動することができますから。パリにいた時は、12歳の息子が土曜日の夜に地下鉄に乗ってシャンゼリゼに行くのを許すなんて考えられませんでした。自動車での移動が不可欠で、子どもたちが移動するときは両親に頼らざるを得ない都市も存在するのです。

人々は、デザインが日本で発明されたことを忘れている

日本であまり強調されていないことの一つは、非常に革新的なビジネスコンセプトを持つ、とても創造的な若い起業家新世代の存在です。インスピレーションを求めて京都に行ったスティーヴ・ジョブズが語ったように、デザインはここ日本で生まれたと言える面があるのです。人々が忘れがちなこの面ゆえに、私は日本の将来についてかなり楽観的なのです。

PROFILE
フランソワ・トラウシュは、GEキャピタル・リアルエステート・アジアパシフィックのCEOであると同時に、GEキャピタル・リアルエステート・ジャパンの社長でもある。東京に赴任したのは2年前。それ以前には、ドイツや米国を拠点に数年間不動産業界で活躍した経験を経て、フランスでGEキャピタル・リアルエステートのウェスタンヨーロッパCEOを務めていた。

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