JQR TOP INTERVIEW – ハバス・ワールドワイド・ジャパン株式会社 代表取締役 スティーブン・コックス氏

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ソーシャルメディアは日本人と相性がいい

口コミは、これまでずっと日本の社会にしっかり根付いてきました。 欧米にもタッパーウェアとかエイボンなどがありましたが、日本では今でも、訪問販売はごく当たり前に行われていますね。常備薬から銀行口座、あるいは豆腐にいたるまで、あらゆる物が戸別訪問で売られています。かつての富士銀行を例にあげましょう。富士銀行では営業担当者に各家庭を訪問させました。たとえその担当者とそれまで面識がなくても、お客はおそらく彼を信用することでしょう。担当者は顧客に書類への署名を求め、現金を受け取って立ち去りますが、顧客が彼の正直さを疑うことなどまずありませんでした。彼は銀行の大きな看板と評判をしょっていたからです。私はこれが、ソーシャルメディアがなぜ日本人と相性がいいかを説明する大きな要因だと思っています。つまりソーシャルメディアは、お互いをあまりよく知らない者同士が新しい関係を作る方法なのです。日本では人間関係がすべてです。この社会では、人間関係こそが力を与えてくれるのです。

もうひとつソーシャルメディアが容易に普及した理由は、日本人はどこに行こうと、膨大な情報を進んで手に入れようとすることです。雑誌を見てください。通りに溢れる電光掲示板やウェブサイトを見てください。トップページに点滅している山のような情報の中から、皆さんはワンクリックで自分の行きたいところへ行くことができます。欧米のサイトとは違う点です。欧米のサイトでは、最初にいくつか想定されたカテゴリーが用意されていて、その中から自分が探している情報がありそうな場所を選び、リストの中から順にクリックしていくとようやく必要な情報にたどり着きます。つまり日本人は、信じられないほど多くの情報の中から欲しい物を瞬時に選び出すことに長けていて、それを他の人たちと共有することにも慣れているのです。もう1つの違いは、世界の他の国々と異なり、日本人はソーシャルメディアを匿名で利用していることです。それは利用法だけでなく目的すら変えています。Mixi ではニックネームを使った「口コミ」の書き込みが主流ですが、Facebook でも同様に「やあ! こんにちは! 今ここにいるよ。これ見える? こんなことしてるんだよ」と。日本人は自分が誰であるかを明かすことに価値があるとは思っていません。「ねえ、私を見て!」というのは日本的ではないのです。

西欧のブランドにとって、これはなかなか理解し難いことです。というのも、彼らはターゲットである消費者が誰かを知りたがっているからです。消費者の名前や年齢はもちろん、彼らが何をし、何を買い、何について話したがっているのか知りたいのです。外国企業はどんな利益を上げられるか知りたがりますが、消費者にどんな利益を提供できるのかを知ろうとはしません。外国企業のFacebook はこんな具合です。「さあ!このページへ来て当社を好きになって下さい!当社が皆さんにぜひ伝えたいことをこのページで見て下さい。皆さんは必ず、当社のことを友だちに話すようになるに違いありません」 私たちには、日本で十分効果のあることが証明されている広告テクニックがあります。当社ではそれを「in-text advertising( 文脈埋め込み広告)」と呼んでいます。面白い映画を夢中になって見ている最中に、その映画を中断して、あなたの足が臭ってますよ、というコマーシャルを流しても、誰がその宣伝を真剣に見るでしょうか。むしろ私たちは、消費者が情報を進んで受け入れやすい状況、広告に引き付けられるような状況全体を創出し、その状況の中にブランドを統合することを優先しています。消費者はその特定の状況の中で、直接企業と双方向で結ばれ、質問をしたり提案したりします。 例えば絆創膏の宣伝をしたいと思ったとします。消費者が絆創膏について聞きたいと思うのはどんなときか、まず正確に把握しなければなりません。その正確なタイミング以外には、消費者は絆創膏のことなど考えもしないでしょうからね。 そこで私たちは、家族キャンプに関するインタラクティブな情報サイトを使いました。この方法はかなりうまくいきました。今この方法は世界中でよく使われるようになりましたが、日本ではずっと以前から大変重要な方法になっています。

日本人はイベントが大好きです。そこで私たちは、例えば、QR コードを使った電車広告をしたこともあります。消費者がQR コードを使って別の場所に行くと、さらに多くの物が手に入り、そのブランドを体験し知ることができます。私たちは、ブランドや商品について直接語ったり説明したりするのではなく、消費者が関心をもつような状況の中にブランドや商品を填め込む方法を考えなければなりません。 私たちは消費者が情報を受け入れやすいあらゆる瞬間あらゆる接点を提供し、ブランドをその中のどこかに位置付ける必要があるのです。

また、デジタル化しようとするとすぐに気付くことですが、日本には小さな開発企業が無数に存在します。アプリの制作会社がこちらに1社あるかと思えば、あちらにはウェブデザイナーが1人いる、という具合です。日本で事業を行う外国企業として、当社は、これらのあらゆる機能を1 つの総合的なサービスとして提供する素晴らしいチャンスに恵まれました。日本の代理店がこれまでできなかったことです。 日本では、広告代理店は小さな企業を買収して傘下に入れて仕事をさせる傾向がありますが、それぞれの企業はみなばらばらに仕事をしています。そこで私はすべての重要な分野から最も才能のある人々を集めて、総合的なデジタルチームを作り上げました。

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