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JQR INTERVIEW – クロード・ガニオン監督

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自分の言動を過大評価せず 人生の楽しみを味わう

 私はこれまでもずっと、身体的な力を濫用する人間を嫌い抜いてきた。「カラカラ」のシナリオの出発点もそこだ。暴力に焦点を合わせた映画を作ろうとしたのではなく、暴力を映画の中に取り込むことを狙った。次に、ガブリエル(訳注:主演男優、ガブリエル・アルカン)のインテリイメージに焦点を当てた。スピリチュアルなものを求めて日本にやってくるすべてのインテリを連想させるイメージだ。来日して日が浅かったころ、私は“ゼン(訳注:禅の悟りを啓いたような)”男とルームシェアしていた。彼は半年も女性との関係を断っており、これから先も金輪際必要としない、と公言していた……。彼は23歳だったのに!彼は、私がガールフレンドを連れてくると、いつも説教がましいことを言っていた。だが、ある夜のこと、障子を隔てて隣の部屋で寝ていた私の耳に例の喘ぎ声が聞こえた。カラカラのベッドシーンは、あの夜の出来事と比べたら無に等しい。あれには大笑いしたので、この滑稽な出来事を自分の作品の一つで使ってみよう、とずっと考えていた。以前にも別のテーマの映画に使おうと試みたが、うまくいかなかった。これに対して、「カラカラ」は、あのとっておきエピソードを組み込むにはうってつけだった。自分の言動を過大評価してはだめだ。瞑想して、心身を清らかに保っても無駄なこと。人生の楽しみを味わうのを止めてはならない。

日本のスタッフはいつでも真剣に取り組む

 日本での撮影は、何とも言えず素晴らしい。一番の利点は、日本の人たちは足を踏み出す前に大いに躊躇するが、いざ足を踏み出したら、とことん関わろうとすることだ。私にとって、スタッフのこうした真剣な取り組みは大きな価値を持つ。日本人スタッフは、自分たちが全面的に楽しめない仕事であっても手を抜かない。また、労働組合が存在しないことは大きなストレスを省いてくれる。今は、映画界の被雇用者を酷使するなんて時代ではない。皆が疲れたら、休むまでだ。だから、映画界に労働組合があることの意義を私は認めない。ケベックの例を挙げると、今や権利を濫用しているのは被雇用者の側であり、休み時間に撮影時間が一分でも食い込んだら超過勤務手当を要求する始末だ。だから、女優が一回でワンシーンを決めることが出来ないために、出来るようになるまで時間を与えることは監督にとってストレスとなる。これが映画をダメにしてしまう。それに対してここ日本では、スタッフから一日の撮影時間が短すぎる、と言われてしまう。

私はいつも100%の力を発揮したいので、パワーが98%に下がったらいったん撮影を終わりとするのだ。

 

PROFILE

1949年にカナダのケベック州で生まれる。1970年初頭に来日し、初めて手掛けた長編作品『Keiko』で日本映画監督協会新人賞を受賞。その後日本とカナダを行き来し、『ケニー』『スロウ・タイム』など、国際的に評価が高い作品を手掛ける。2012年には沖縄を舞台にした『カラカラ』を公開。『カラカラ』は、モントリオール世界映画祭で、「世界に開かれた視点賞」と「観客賞(カナダ長編部門)」の2冠を獲得。現在は沖縄に在住し、カナダと行き来している。

写真 / 菅洋介 インタビュー・文/ JQR 編集部

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