京都に暮らす歴史と静寂、そして利便性

ニッポンを話そう – 日本在住外国人による鼎談

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私たちは法然院の縁側に座って中庭を眺めている。
明るい秋の日差しと穏やかな風。まさに京都ならではのしつらえだ。
私たちが、少なくとも見かけは日本人ではないということを除けば……。 日本で暮らす外国人の大半が東京こそ自分たちの活動拠点だと考えているが、世界中で京都以上の場所はないと思っている外国人も少なからずいる。
その理由を京都在住の外国人3人に聞いてみた。

Joel Stuart
画家、版画家、インストレーションアーティスト。米国ワシントン州の出身で 26 年前に来日。京都は創作活動に理想的な街だと感じている。
Oussouby Sacko
マリ出身。6 年間中国で建築を学んだ後来日。京都で研究を終えた後 1,2 年の実地研修を経て帰国する予定であったが、それからすでに 21 年が経っている。
Robert Yellin
陶磁器美術研究者、米国ニュージャージー州出身で1984 年に来日。陶磁器に関する書物を数冊執筆し、日本の陶磁器に関する世界最大の英語によるデータベ ースを作成。長年静岡に暮らしていたが、15 か月前から京都に移り住む。

JQR: たいていの外国人は東京を居住地に選びますが、皆さんはなぜあえて京都に ?

ROBERT: 京都に越すことに決めたのは、文化的な理由と仕事上の理由からです。私は野球カードのコレクターのようなもので、彼らが野球選手全員のデータを事細かに知っているように、私は陶磁器に関してあらゆることを知っています。陶磁器はもともと九州から名古屋までの西日本で作られました。日本六古窯と呼ばれる陶磁器の産地は西日本にあります。京都から列車に乗ればわずか1時間で、信楽、丹波、越前、備前の窯元に行くことができます。私が愛してやまない芸術に近いこと、それだけで京都にいる意味があるのです。

JOEL: 私は都会が好きなので、東京や大阪へ行くのも大好きです。でも京都にはどこか田舎の風情が残っています。周りを山々に囲まれていますし、市街地の真ん中には鴨川が流れています。私は自然も大好きなので、京都はジョギングや野鳥観察にもうってつけです。 10 歳の頃、私はよく一人でニジマスを釣りに行きましたが京都でこうして伝統的な庭に座っていると、あの頃の感覚を取り戻すことができます。

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SACKO: 京都が気に入っている理由は、この都市が人の暮らしに適した大きさだからです。東京は距離が遠すぎたり、雑踏に邪魔されたりして、思うように行動できないことがよくあります。でも京都は東京とは違い、自転車で行くかバスで行くかを決めるのも簡単。京都の街はシンプルなのですぐに理解できるし、思い通りに行動できます。歴史的な名所を見たければすぐ近くにあり、また現代的な場所に行きたければ、いたるところにおしゃれなカフェがあります。ネットワークを繋げるのがとても簡単なのです。

JOEL: などの歴史的都市と同じように、京都は生きた美術館です。しかも、今朝私がここへ来たときのように、自転車に乗れば街の端から端まで 20 分足らずで行くことができます。デパートもあればインターネットもあり、国際的な暮らしにも不便しません。私たちだけ孤立するようなこともありません。

SACKO: 日本人が、「京都にはたくさん決まりがあるし、京都人は近づきにくい」と言うのをよく聞きます。でも私がとても面白いと思うのは、外国人にとっては決まりがある方がむしろ住みやすいということです。京都の人たちは、外国人にあらゆる決まりや日本文化について進んで教えてくれます。他の地域から来た日本人は、ほとんどが敢えて尋ねようとはしませんね。自分で壁を作っているようなものです。しかも京都の人たちは、相手が外国人であれば、決まりにはこだわらない融通性も持ち合わせています。

JOEL: でも、その「距離」が私にはとても役に立っています。距離を置くか置かないかは、その時の気持ち次第で選べます。 私は京都にあまりに長く住んでいるので、たまにアメリカに帰ると、みんなが面と向かってあらゆる事に自分の意見を言うので、「なぜ僕が君の考えを聞かなければならないんだ?」と言いたくなりますよ。

全員: 爆笑!

JOEL: 滋賀県の田舎に住んでいる友達がいます。彼も芸術家なのですが、そこでは、1日に 5 回は近所の人が来て、長椅子に腰を下ろして、彼の絵について語り合うのです。彼自身はそんな周囲の関心を好ましく思っていますが、私だったら、人がそうしょっちゅう訪ねてきたら、仕事が手につかないでしょう。京都では、私が仕事をしているときは誰も邪魔しません。でも誰かに会いたいと思えばすぐに来てくれます。 私にとっては、そんなつかず離れずの関係がちょうどよいのです。

ROBERT: 第二次世界大戦中に爆撃を免れたことで、京都には他の都市には見られない魅力があります。

JQR: どんな魅力ですか?

ROBERT: 曲がりくねった狭い路地を歩き回って道に迷うと、そのたびに毎回何か新しい発見があります。はるか遠い昔からずっとそこにあったものに出遭えるのです。京都の人が「戦争」というと、それは 1400 年代の応仁の乱のことを話しているのです。それに京都は近代化も進んでいます。最新の機器を探す場合でも、秋葉原のように 1 つの地域に集中しているわけではありませんが、丹念に探せば必ず欲しいものが見つかります。

JQR: 確かに京都は魅力的で、歴史に富んだ街です。でもそれは、休暇でここに来ても探せるでしょう。日々京都に暮らすことは、皆さんの生活にどんな影響がありますか?

ROBERT: 一生を休暇だと思えばいいんじゃない?

全員: 爆笑!

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