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ニッポンを話そう – 日本在住外国人による鼎談 – 日本における長距離ランニング事情

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日本人は走ることが大好きだ。
マラソンだろうが駅伝だろうが、全国からランナーの応援に駆け付ける。
学校ではマラソン大会が催され、タレントが24時間走る番組が人気を集めている。
どんなスポーツでもウエアや道具などに加え、対戦相手や仲間が必要だ。
しかしランニングは外に出て走るだけと、そのどれもが不要。
とてもシンプルで自由なスポーツなのである。
ところで外国人にとって、この国で走るということは、どういうことなのだろう?
筋金入りのランニング中毒という男性3人が、「日本で走ること」について話し合った。

 

Simon Bray
英国ロンドン出身で10年前から日本在住。小さいころから走ってきたが、日本の素晴らしい環境がトレイル・ランニングを本格的に始めるきっかけに。
Andrew Flynn
米国ニューヨーク出身で10年前に3年間東京に住んでいたが、半年前から再び日本に在住。4年程前から健康の復活の為にランニングを始めた。
Ron Choi
米国アラバマ出身で8年前から日本在住。高校時代はよく走っていたがその後は遠ざかっていた。3年前に真面目に走り始めた。

 

JQR : 皆さんが、走るようになったきっかけは?

Ron : 高校時代は走っていましたが、社会人になって走らなくなりました。それから25年後、つまり3年前に友人に誘われてまた走り始めたのですが、2km走ったところで故障してしまって。それで、そろそろ自分の体を大事にする時が来たのだと悟ったわけです。以来走り続けて、今では体重は高校時代以下になりました。

Andrew : 高校ではサッカーをしていました。僕も卒業してから25年間何もせず、4年前に体を大事にしなくてはと思って兄弟に話をしたところ、彼は昔から1年に1回マラソンを走っているのだと言うんです。

ALL : 知らなかったの?

Andrew : そうなんですよ。ウチは大家族でお互いに細かいことまで言わないからね。彼からは裸足走法を教えてもらいました。

Simon : 僕も若いころはサッカーに夢中。それからテニスもね。ランニングは長年続けていたけれど別に真剣にやっていたわけではなくて、週末に住まいの近くの公園を走るくらい。それが、3年ほど前から高い山で走ることにはまり始めたんです。きっかけは日本ですよ。

JQR : どこですか?

Simon : 最初はオックスファムのチャリティートレイルというイベント。小田原から箱根山を超えて富士山の山中湖までの100kmの行程を48時間以内で完歩するというイベントでした。そのイベントの途中で走っている人が目に留まり、自分自身トレイルランニングに非常に魅力を感じてやり始めたんです。初めて下山した時の極度の恐怖と興奮の混在した気持ちは今でも忘れられない。それ以来、トレイル中毒です。

JQR : でも、他のスポーツではなくてなぜランニングなんですか?

Andrew : 人間のできる最も自然なことですよね。

JQR : それだったらウォーキングでしょう?

Andrew : でも、ウォーキングじゃおもしろくない。

Ron : それほど遠くにも行けないし…。

Simon : ランニングにはあってウォーキングにはないものがありますよ。トランスです。僕にとってトランスは催眠作用に近い。明らかに血流が速くなり、それによって何かが引き起こされるような感じ。

 

 

JQR : 皆さんがおっしゃっているのは、いわゆる「ランナーズハイ」のことですよね?

ALL : そのとおり。

Ron : 距離を走っている時、足は継続的に地面に触れリズムを刻みます。僕の場合、土曜の朝は決まって30km以上を走りますが、その間約2~3時間、リズムを刻みアドレナリンが出ます。

JQR : でも、スポーツなら何でもそうなりませんか?

Andrew : 走る時には一人になれるし。

Ron : ランニングには何か原始的なものがあるけど、それだけではありませんよ。日ごろのストレスから解放される素晴らしい方法でもあります。僕は精神的に助けられてます。仕事は複雑で大変だし、家に帰れば3人の子供。走っている時には走ることだけに集中して、日常のあらゆる雑事を忘れます。

Andrew : ランニングの時間をある種の瞑想の時間にしている人もいれば、走りながら問題を解決する人もいる。誰にも邪魔されないからね。

Ron : それに、走るのには必要なものは何もありませんしね。靴を履いて外に出ればよいだけです。

Andrew : トレイルランニングをしているサイモンにはちょっと必要なものがあるよね。

Simon : そうそう。山を走る時は、持っていかなければならないものがあります。コンビニや自動販売機に立ち寄るわけにいかないからね。それに、雨や雪の備えも必要だし。

Andrew : 食料もね。

Simon : 初めて山に行った時にダイエットビスケットを持っていったんだけど、4時間も経つと、そのビスケットではカロリーが足りなくて、とても走るどころではなかった。 それで、いやというほど思い知らされました。

ALL : 爆笑

Andrew : でも、日本の「カロリーメイト」はすごくいい。

Simon : カロリーメイトは脱水状態かどうかが分かる目安になります。カロリーメイトが口の中にくっついて飲み込みにくくなったら、水分が足りない証拠。

Andrew : でも、カロリーメイトが作られた目的はそれじゃあないと思うけどね。

ALL : 爆笑

JQR : 走る時はいつも一人?

Simon : 山で走る時には、必ず誰かが一緒にいるのがベスト。

Andrew : そう。だけど、誰かと一緒に行く時、車中で話はするけど、相手は速すぎて、一緒に「いる」けれども、「走る」のは一緒じゃないな。

ALL : 爆笑

Ron : 僕の場合は、走る時は一人の方がいい。一人でいられる唯一の時間ですからね。誰かと一緒に行ったら、話したり会話を盛り上げたりしなければならないでしょ。だから、特に仕事で大変な問題があって夜眠れないときには夜中に一人で外に出て走ります。帰ってきた時にはすっきりしていますよ。

Simon : 僕は勤務先から走って帰宅しています。たった10kmですから1時間もかからない。格好のストレス解消にもなるし。

Andrew : それと、僕たちがしているランニングは、例えば公園でしゃべりながら走っているようなものとは違うよね。そうしたランニングはどちらかというと「お付き合いランニング」に近い。

JQR : ということは、皆さんのようなランニングのレベルに達するには特別な訓練が必要ということですか?

Andrew : まず、一定時間内に走る距離を徐々に伸ばしていきます。慣れてきたらそのスピードを保ちながら、また距離を少し伸ばします。より速く、より上手く走る特別な魔法はないですから。

JQR : ということは、他のエクササイズなどで体を作る必要はないということですか?

Simon : 僕は自転車に乗ってます。

JQR : ランニングに良いから?

 

 

Simon : いやいや。早く目的地に着くため。

ALL : 爆笑

Andrew : エリートのプロのランナーだったら、成績を上げてタイムを縮める特別な練習をしたり、食事も特別なものを摂っていることは確実だけど、そうでなければ、必要なのは体幹の強化だけです。

JQR : 例えば裸足ランニングを学ぶ時には特別な練習をする必要はなかったのですか?

Andrew : はい。ゆっくり始めるだけ。ランニングの最も自然なやり方ですからね。

Ron : 僕の場合は、自然に裸足ランニングに行きつきました。1カ月に約120kmを走りますから、膝にストレスのかからない方法をすぐに見つけ出しました。

JQR : 従来のランニングスタイルと大きな違いがあるのですか?

Simon : 関節に負担をかけるか、筋肉に負担をかけるかの違い。僕の場合は薄さ2mmの5本指のシューズを使っていますけど、この走法だと、主に使うのはふくらはぎです。ナイキのクッション・ランニングシューズが発明されるまでは、ふくらはぎを使うと自然にランニングに適した足ができる、と言われていました。

Andrew : クッションは地面の感触がないので気持ちが良い。押し戻す弾力性があると、実際気が付かないうちに膝に大きなダメージを与えます。

JQR : 日本でのランニングはいかがですか? 他の国との違いはありますか?

Andrew : ニューヨークにいた時にはよくセントラルパークの定番のランニングコースを走ってました。数カ月前に来日して、レースは1本しか走っていませんが、トレイルランニングも始めました。これが実に良かった。

Simon : 僕の場合は、東京の素晴らしさですね。電車が毎朝200km離れたところから都心に人を運び、週末になるとその同じ電車に乗って1時間足らずで山に行ける。さらに30分も行けば 文明のかけらも耳に入ってこない。こんなことは平坦なロンドンではあり得ませんから。

Andrew : 日本では、トレイルのネットワークがとてもしっかりとできています。何キロものトレイルコースがあって、地図もきちんとできています。

JQR : 市街でも走るのですか?

ALL : もちろん走りますよ。

Ron : 日本では他とはまったく違うことがあります。それは交通ルール。

JQR : どうして?

Ron : 最近、ランニンググループに参加したのですが、信号のたびに全員が足踏みするんです。でも、日本は曲がり角という曲がり角に信号があるんですよね。

ALL : 爆笑

Ron : 誰もいない狭い路地でも止まって待機する。アメリカではありえない。確かにその方が安全ですけどね。ということで、約20kmを走り終わるのに6時間半かかりました。

ALL : 爆笑

Ron : でも、寺社巡りや山ノ手、東京マラソンコースなどのコースを楽しむには、クラブに所属して走るのはいい方法です。

Andrew : 東京には川がたくさんあり、川沿いには必ず道があって、それがきれいに整備されているのは素晴らしいですよ。

Simon : 山を走る時には様々な風景が見られます。ロードでは約20kmですが、トレイルランニングでは30km以上はざらです。きれいな景色に囲まれて、アップダウンと山中を駆け抜けるのは格別。日本で走る醍醐味ですね。

 

 

JQR : 東京マラソンにはどうやって参加するのですか?

Andrew : 僕たちは参加していません。

ALL : 爆笑

Simon : 運が良いか、寄付しなくちゃ…。 僕たちはチャリティーランに参加するので、そのために一定の金額を寄付します。

Ron : 忙しくて申し込むのを忘れちゃって。だから、僕もチャリティーチームに寄付せざるをえませんでした。

Andrew : エントリーを希望する外国人は優先枠です。でも、残念ながら今回の東京マラソンは申込が間に合わなくてエントリーできなかった。その埋め合わせに、先週「ウルトラマラソン」を走りましたよ。 ウルトラマラソンはマラソンよりおそらく2km距離が長い。なかなか、おもしろかったですよ。

Simon : 僕は、富士山を一周する160kmレースの申し込みをしたところです。

ALL : すごい!

Ron : それにしても、東京マラソンはすごい、の一言。コスチュームを着た人がたくさんいて。 マラソンを堅苦しく捉えないで、大きなフェスティバルのような感じ。宗教指導者のような格好をして裸足で完走している人もいましたよ。東京タワーやスカイツリーも見えるし……。

Simon : でも、僕たち二人はチャリティーTシャツを着なければならなかったんですけどね。

ALL : 爆笑

 

 

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