スレンの糸染めに精密な織り

風合いと堅牢度を併せ持つ
最高級のコート地をつくる

埼玉県比企郡 ダイワインターテック株式会社(J∞QUALITY認証企業)

風合いが出て、染色堅牢度が優れていることで知られるスレン染め。
染めるには高い技術が必要で、しかも近年染料が入手しづらいという。
それでも、スレンの糸染めで仕上げた生地にこだわる理由とは?

取材・文/JQR編集部 写真/内藤サトル

Decrease Font Size Increase Font Size Text Size Print This Page

f09f11
1.染め上がった糸。これから熱風で乾燥させる。2.原料となる糸を、染めやすいように再度巻き直す。3.きれいにスレンに染め上がった糸と生地のサンプル。4.スレン染め40年の経験を持つ鈴木博嗣郎氏。5.高速で回転する整経機。6.糸一本一本を検査する。7.手前の棚に糸がずらりと並び、そこから糸が整経機に続く。

1.染め上がった糸。これから熱風で乾燥させる。2.原料となる糸を、染めやすいように再度巻き直す。3.きれいにスレンに染め上がった糸と生地のサンプル。4.スレン染め40年の経験を持つ鈴木博嗣郎氏。5.高速で回転する整経機。6.糸一本一本を検査する。7.手前の棚に糸がずらりと並び、そこから糸が整経機に続く。

ダイワインターテック株式会社
埼玉県比企郡ときがわ町西平975 TEL:0493-67-1245

生地を染める方法のひとつにスレン染めがある。
「スレン染料で染めた生地は日に当たっても色が褪せにくく、洗濯しても色が落ちません。排気ガスなどの汚れにも強く、とても堅牢度がいい。特にタフさや高級感が要求されるコート生地にうってつけです」
 ダイワインターテック株式会社の鈴木博嗣郎氏は、スレン染めの利点をこう述べる一方で、難しい技術だとも話す。
 そもそも、丈が長いコートは一枚の面が広い。そのため、糸のつなぎ目や染めムラなどの欠点が目につきやすい。従って、生地を織る糸は長く均一に染まったものが求められる。

 一方、スレン染料で長い糸を均一に染めるには様々な要素が欠かせない。まず原料となる糸を仕入れたら、その糸を別の芯に巻きの硬さを適正にしながら再度巻き直す。金属イオンやアルカリを除去して、染料を溶かす水の水質を一定にする。タンク内の水流をポンプの電圧で流れる速さを調整する。気温や湿度を見定め、毎回染料の調合を微妙に変える、などである。こうした調整がひとつでも狂ったら、糸に染めムラができてしまう。
 このように手間がかかるため、この30年の間に多くの染色工場がより簡便な反応染めに移行した。しかし、スレンの糸染めは縦の色と横の色の織り合わせが魅力だと、社長の野原民夫氏は一枚のコートを広げて見せた。
「この生地は縦が茶で横は黄色です。違った色の2本の糸で織る訳です。すると光の当たり具合、角度によって生地の色が変化し、このように玉虫色に光って見えます。高級感や色の深みがずっと増すんですね」

染めも織りも明治時代から手かげている、ダイワインターテックの野原民夫社長。

染めも織りも明治時代から手かげている、ダイワインターテックの野原民夫社長。

 確かに同じ色、同じ形状のコートやジャケットを着ている人が並んだ時、質感や雰囲気に差が出るもの。これはまさに、素材のポテンシャルによるものだろう。
 染め上がった糸は自社の織物工場で生地に仕立てる。高級コートに求められるのは1インチに経糸170本、緯糸100本という高密度の生地だ。
「経糸1万本の生地を一反(50m)織るのに10〜12時間を要します。しかも、糸切れなどによる傷は5つ以下を求められています」
 確かに高速で織りながら、糸を切らずに10時間稼働させるのは至難の業に違いない。最近はこうした厳しい条件がクリアできず、退場していくメーカーが後を絶たない。染めのムラや糸切れにより、どうしても生地に傷や筋がでてしまうからだ。ダイワインターテックは、戦前から厚地織物を織ってきたノウハウでクリアしている。
「厳しい条件下でも、デザイナーや企画担当者のこだわりや感性を具現化する唯一の生地を作りたい」
 と野原社長。質の高いコート生地の製造は、長年培われた技術と決意によって保たれている。

この記事の感想
  • とてもおもしろく役に立った (5)
  • おもしろかった (3)
  • 役に立った (1)
  • つまらなかった (0)