日本の繊維業の底力を発揮!

創業100年で得たノウハウで
新素材の開発を進める

大阪府泉大津市 大津毛織株式会社(J∞QUALITY認証企業)

海外に足を運び原料を買い付け、糸を紡ぎ、織り、編み、染め、表面加工までを一貫して自社で行う大津毛織株式会社。素材開発に舵を切り、消費者がわくわくする生地作りを目指す。

取材・文/JQR編集部 写真/塩川真悟

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1.巨大な工場(本社)に並ぶ液流染色機。「機械はいずれも特注で、今では100億円かけても揃わない」と宮本部長。工場はコンピュータで制御され、作業する人員は驚くほど少ない。2.タスマニア産メリノ種(羊)の毛。左は子羊のファーストカット。何度も毛を刈った大人の毛に比べて汚れが目立ち、扱いにくそうだ。3.風圧で生地を伸ばしながら検査する。4.起毛機で生地に風合いをつける。

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大津毛織株式会社
大阪府泉大津市旭町17-24 TEL:0725-33-1181

ウールは優れた素材で完成された原料。そのため触らない方がいいと思っていたと、大津毛織株式会社テキスタイル部の宮本隆部長は振り返る。ところが順風満帆だった会社が、15年ほど前から時に赤字を出すようになった。同業他社も次々と廃業に追い込まれていく。競争力をつける必要に迫られ、「ウールでまだできることがあるのでは?」と考えた。
「思いついたのは軽いウールです。薄く軽いのは当たり前ですから、厚くて軽いウールを作ろうと」

 企画を諮ると、原糸部の下村辰雄・取締役部長がタスマニア産メリノ種の生後一歳未満の子羊から採れるファーストカットの羊毛はどうかと言う。この毛は14.5ミクロンとカシミヤに匹敵するほど細く、手触りも遜色ない。しかも価格はカシミヤより安い。その一方、毛先がクルクルと巻いて短いため、糸にするのが難しく厚手の生地に織るのは容易ではない。しかし自社には糸を紡ぎ生地を織り、仕上げ加工までを一貫して行う設備と経験がある。早速タスマニアで原料を仕入れ、上海にある自社の紡績工場へ送った。

テキスタイル部の宮本隆部長(右)と濱野淳一氏。

テキスタイル部の宮本隆部長(右)と濱野淳一氏。

 上海の工場は5000坪の敷地に、1台で約40mの長さがあるカード紡績機5台と、ミュール紡績機10台を備えている。各紡績機には針布が巻かれたローラーが十数本組み込まれ、回転するローラーからローラーへと原毛が梳られながら送られる。これを繰り返すことで、絡み合った毛が徐々に揃っていく。原毛は紡績機三台をくぐり、細く密度がある綿状の原料となり、それをカットして糸に紡ぐ。針布の針の作り込みやそれを埋め込む密度、ローラーの間隔などのデータがなければ、いい糸がひけない。
 出来上がった糸は愛知県一宮市のテキスタイルセンターに送付され、そこで布に織り、再び大阪府泉大津の本社に送られ、染色整理加工を施す。本社工場には巨大で様々な形状の機械が所狭しと置かれている。同じ起毛機でもそれぞれ役目が異なり、20以上の工程を経て、様々な生地の風合いを生み出すという。これらの機械を新調するのは困難で、しかも何万通りもある工程の組み合わせには経験値がものを言う。一度失われたら取り返せない技術なのだ。

 タスマニア産の原毛を使った製品は「ドリームウール」と名付けられた。軽く暖かいことに加え、「弊社独自の織りと整理の技術で実現した」(濱野氏)と言う、ウール100%でありながら、縦14.8%、横5.3%のストレッチ機能を併せ持つ。まさに夢のようなウール地が生まれた。そして、この「ドリームウール」に続いて注目されるのが、重量が同じ太さの糸の3〜4割軽い「エアーファブ」である。
「これからも、着る人にワクワク感を持ってもらえる生地を開発します」
と、宮本氏。どんな生地が登場するか、今後も楽しみである。

ナノレベルの撥水剤を繊維と結合させ、表面塗布にはない撥水性能を実現。つくとなかなか取れないウールの水染みに有効な撥水加工。

新技術「アクアドロップ加工」
ナノレベルの撥水剤を繊維と結合させ、表面塗布にはない撥水性能を実現。つくとなかなか取れないウールの水染みに有効な撥水加工。

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