オフィスグリコの『置き菓子®』ビジネスって何?

「リフレッシュボックス®」(写真)や冷蔵庫を無償で貸し出し、お菓子やアイスクリーム、飲料などを企業に置くグリコ独自の『置き菓子®』ビジネス、「オフィスグリコ」。
取った分だけ自己申告で貯金箱の中にお金を入れるだけ。
そのユニークなビジネスは日本ならでは!?

文/JQR 撮影/豊田和志

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オフィスグリコの『置き菓子®』が入っている「リフレッシュボックス」。中のお菓子はどれでも1個100円!

通常、メーカーは商品を問屋を通じてスーパーやコンビニなどの小売店へ卸すため、直接、消費者に商品を販売することはない。大手菓子メーカーの江崎グリコもかつてはそうだった。そうした既存の仕組みからの脱却を図り、消費者に直接商品を届けることができないかと考えたのが『置き菓子®』ビジネスの始まりだったという。

「オフィスのデスクの引き出しには、何かしらお菓子が入っているものです。しかし、就業時間中にお菓子を買いに行く人は少ない。だからこそ、オフィスは新しいビジネスチャンスの場ではないかと考えました」(川端さん)

 そのアイデアを具現化するために、プロジェクトチームを立ち上げた。お客様と直接顔を合わせ、商品を身近に感じ、購入してもらうことがテーマ。最初に考えついた販売方法は“駅弁スタイル”だった。お菓子を手にスタッフがオフィスに直接販売に訪れる方法だ。

「実際にやってみると、就業時間中のオフィスで“お菓子いかがですか?”と声を張り上げてもお客様にとっては迷惑なだけ。結局、昼休み限定や18時以降、という制約がつきました。しかも直接販売するのは商品単価が安いこともあり、とても効率が悪い。すぐに断念しました。そこでお菓子をオフィス内に置いてもらえないか、と考えたのです」

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江崎グリコ株式会社

オフィスグリコ推進部

川端弘太郎さん

2000年よりオフィスグリコの事業に携わる。東京での展開に始めから関わり、商品を手に、あちこち営業に歩き回ったと話す。

「オフィスグリコ」は、従業員が各自で利用したい時にお菓子などの商品を取り出し、代金を備え付けの貯金箱に投入するシステム。ボックスや冷蔵庫の設置費用はグリコが負担。しかも盗難、紛失などによる金銭的補償も求めない。1997年にプロジェクトがスタートし、1999年に大阪に第1号販売センターを開設。2002年より東京に進出して本格展開が始まった。この『置き菓子®』はビジネスモデル特許を取得。サービスを提供しているのは首都圏、横浜、川崎、千葉、埼玉、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡の一部エリア。

オフィスグリコ(http://www.ezaki-glico.net/officeglico/

ヒントは野菜の無人販売

オフィスグリコの
人気アイテム

数百種類ある商品の中で、人気があるのは小腹をほどよく満たしてくれるこれらのお菓子。「ビスコ」は定番の味以外に、発酵バター仕立てや小麦胚芽入りもリクエスト多数。また、ボリュームと美味しさを兼ね備えた「フレンドベーカリー」のココア&チョコチップは数量限定品だがファンが多い。

 『置き菓子®』を始めるにあたって、グリコがゆずれなかったのは、企業にお金を払ってもらうのではなく、利用する個人に商品を買ってもらうこと。まとめて集金するのではなく、個人からお金を頂く方法を考えた。そこで思いついたのが日本各地でよく見かける野菜の無人販売のスタイルだった。

「正直言うと、最初は貯金箱を置くだけで代金をきちんと回収できるのか不安がありました。そこで、事前に参考調査をして、野菜の無人販売をしている農家を回って回収率をうかがったのです。するとほとんどが90%以上の確率で料金箱にお金が入っている。考えてみれば、商品やお金が入った自動販売機は日本では当たり前のように置かれています。これは私の考えですが、日本人は子どもの頃から感謝の気持ちが身についていて、例え無人販売だったとしても、野菜を手間暇かけて作ってくれた人の姿を思い浮かべ、その対価をきちんと払わなければいけないと無意識に思うのでしょう。だから、『置き菓子®』もお菓子を届けるスタッフが目にとまれば、不用心な貯金箱でもきちんと集金できるのではないかと考えたのです」

 『置き菓子®』のサービスを始めた当初、商品ボックスには、籐かごや、駄菓子入れに使われるポット型を試したが、商品があまり入らないうえに、見映えもよくなかった。もっとオフィスになじむものにしようと、文房具などが入っていても違和感がない今のB5サイズの3段式のケースに落ち着いたという。これなら1ボックスで約10種類、24個のお菓子が入る。お金を入れてもらうカエルの貯金箱は、今でこそオフィスグリコのキャラクターのようになっているが実は市販品だ。

f14 「ほとんどの貯金箱は、お金を入れるところが後ろにあるんです。どうせならお菓子を買ってもらう時に投入口が正面にあって、気持ちがなごむようなものがあればと思いました。そんな時に見つけたのが、ある銀行で口座を新規開設した際にもらえる景品のこのカエルの貯金箱でした。大きさもちょうどよかった(笑)」

 とはいえ、すぐに『置き菓子®』が認知されたわけではない。営業に回っても、名刺交換どころか話も聞いてもらえず、受付で追い払われることも多かったという。とくに2001年に起こったニューヨークのテロの後は、各社のセキュリティーが厳しくなり、入館が難しくなった。それでも地道に営業を続けて、少しずつ認知度が高まったこと、IT企業など若手の経営者が増え、職場の雰囲気が変わってきたことなどから受け入れてもらえるようになった。

防災備蓄としても活用

 『置き菓子®』のオフィスグリコがスタートして14年目の現在、設置は約10万社。お菓子箱だけで約12万台設置している。最初はワンコインの100円で買える菓子だけだったが、“もう少し小腹が満たせるものがほしい”“飲み物もほしい”といった声も多く寄せられたため、現在は100円以外のアイスや麺類、ドリンクなども置くようになった。自社製品だけでは補えないカテゴリーは、お客様のためと他社製品も扱う。
 とくに東日本大震災以降は、防災備蓄に対する企業の意識が高まり、備蓄代替として利用されるケースが増えているという。

「東京都では帰宅困難者対策条例で、従業員の3日分の水や食料を備蓄するように指導されていますが、いつ使うかわからないものを用意するのは企業にとって大きな負担です。しかし、我々のサービスを利用すれば企業様はコスト負担することなく備蓄品の代替の一部として、置いておくことができます。またオフィスグリコは定期訪問により、賞味期限管理のために商品の入れ替えを行います。日常利用しながら非常時でも管理された商品をお使い頂けるのです。循環型の備蓄と考えていただくとわかりやすいですね。つまり商品管理はもちろん、クオリティーコントロールも職場の方々からするとノーリスクでできるのです」

 そして職場におけるお菓子の食べ方も変わってきているという。
「普段はオフィスの一画においているボックスを会議の際に持って行き、そこでみんなでお菓子を食べながら、意見を出し合ったりしている企業もあります。気軽なお菓子が、気分のリフレッシュになったり、部下や上司と会話を弾ませるきっかけになっているようです」

商品を運ぶカートはオフィスグリコオリジナル。小さなエレベーターにも入るように設計されている。2km圏内ならこのカートを押して徒歩でお客様のところを回る。

商品を運ぶカートはオフィスグリコオリジナル。小さなエレベーターにも入るように設計されている。2km圏内ならこのカートを押して徒歩でお客様のところを回る。

代金回収率は95%以上

 さて、気になる商品代金の回収率だが、野菜の無人販売を上回る95%以上だという。
「例えば、商品が9個減っているのに貯金箱を見ると800円しか入っていないこともあります。でもスタッフが次に行った際、商品が8個しか減ってないのに900円入っているということもよくあります。おそらく、お菓子を買おうと思った時に小銭がなくて後でお金を入れたということでしょう。お支払いはお客様に任せる、というスタイルは成功し、今は年間の売り上げが50億円に到達するほどです。今では新卒採用のアピール項目に“オフィスグリコ完備”などと書かれていることもあり、うれしくなりますね」

 小さな金額の売買でも、信頼関係によって一大ビジネスに成長した『置き菓子®』ビジネス。コミュニケーションを大切にした商法はまだまだ捨てたものではない。

商品と一緒に元気を届ける

オフィスグリコ
小宮涼子さん
カートを押すので、ウエストに専用ポーチをつけて手は何も持たないスタイル。商品管理をする携帯端末専用ポーチと、メモなどを入れるポーチはどちらもグリコ仕様。

 オフィスグリコのひとつのセンターにスタッフは10名前後。エリアは担当制で、1〜2週間に1回、定期的にお客様のところへ毎回同じスタッフが訪れる。グリコのコーポレートカラーの真っ赤な制服とカートが目印だ。

「お客様のところを訪れる時間は1回あたり5〜10分です。商品の入れ替えや補充のほか、その間にリクエストカードを回収したり、直接お話を伺ったりします」(小宮さん)

 雨の日も風の日もスケジュールを変更することなく訪れるため、“こんな日に頑張っている姿を見て、元気をもらったよ”などの言葉をかけてもらうこともよくあるという。提供しているのは実は商品だけではないのだ。コミュニケーションは商売の基本であることを実感した。

オフィスグリコ利用しています!
株式会社フーディソン

魚ポチ事業部
長川和弘さん

水産業界の活性化のためにITを活用し、水産流通のプラットフォームを再構築。生産者と飲食店、店舗、一般消費者を結ぶためのシステムづくりなどを手がけている。

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「オフィスグリコ」は約2ヵ月前から導入しています。休憩時間や夕方の小腹がすいた時に利用していますね。オフィスが9階なのでわざわざ外に買いに行くことを考えるとずっと便利ですし、商品もこまめに入れ替わるので飽きることもありません。食べたい時に食べたいものがすぐ手に入るサービスはありがたいですね。(長川さん)

冷蔵庫には飲料がぎっしり。コーヒー、野菜ジュース、お茶、ミネラルウォーター、栄養ドリンクなどラインナップが豊富。

冷蔵庫には飲料がぎっしり。コーヒー、野菜ジュース、お茶、ミネラルウォーター、栄養ドリンクなどラインナップが豊富。


フーディソンではリフレッシュボックス2個と冷蔵庫を完備。補充が終わった後はどんな商品が入っているか、思わずのぞいてしまうという声も多い。

フーディソンではリフレッシュボックス2個と冷蔵庫を完備。補充が終わった後はどんな商品が入っているか、思わずのぞいてしまうという声も多い。


アイスは社内で人気だという。「とくに夏の暑い日、営業から帰って来た時、冷たいアイスを食べながらほっとひと息つくことが多いですね」と長川さん。

アイスは社内で人気だという。「とくに夏の暑い日、営業から帰って来た時、冷たいアイスを食べながらほっとひと息つくことが多いですね」と長川さん。

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商品を取り出したら100円を貯金箱へ。
愛嬌のあるカエルを見ると、気分もなごむ。

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お客様からおすすめを聞かれることも。
「商品はすべて端末で管理しています。
またリクエストカードでお客様の好みも確認しています」

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商品を補充して、定期的に入れ替え。
同じチョコレートでも味や食感の違うものに。
お菓子だけで年間約150アイテムを扱う。

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