JQR FASHION – おめかし – 粋

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Omekashi 4 top

第3回 keisuke kanda

写真●内藤サトル、石垣星児[BLOCKBUSTER] 文●小澤京子

 

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コンセプト先行のアンウエラブル路線から、B級SF映画の宇宙人風やぬいぐるみのくっ付いた服まで、もはやどのような「デザインのヴォキャブラリー」が飛び出して来ても誰も驚かなくなっているファッション界であるが、keisuke kandaが打ち出す服とその見せ方には、依然として私たちの意表を突くものがある。

 例えば、2011年A/Wのメンズライン。つたない手縫いのステッチが加えられたニットやジーンズ(「温かみのあるハンドクラフト」路線でも、「丁寧な手仕事」路線でもなくて、小学男子の家庭科の宿題みたいである)。中高生時代の「イモジャー」を思い出させるような、ジャージのブルゾン。ゴルフウエアあたりにありがちなブランドマークに見える象は、よく見ると鼻先がペニスになっている。「チ○コ」という言葉の響きだけで、休み時間の間中笑い転げていた頃そのままの、男子的諧謔スピリットの体現である。

 しかし、いわゆる「限界芸術」の領域にあるデザインなのかと言えば、それは違う。例えば、セレクトショップ「ミキリハッシン」とのコラボレーショにより作られた「学ラン」。校章をかたどったチープなプラスチックのボタンや、制服そのままのカラーなど、昭和から続く「ステレオタイプな学校男子」テイストに、お馴染みのハンドステッチが加えられているが、細かな金ラメが折り込まれたアイボリー・ホワイトの布地と、レディス物のようなタイトなサイズ感が、洗練されたテイストも加味している。高い技術性や丁寧なこだわりは、今期のメンズコレクションのみならず、keisuke kandaのデザインに通底している要素である。

 デザイナーの神田恵介がファッションにのめり込むようになったきっかけは、早稲田大学在学時に出会った一人の友人だった。博識で文学にもサブカルチャーにも詳しく、周囲の同年代より大人びていたその友人が当時着ていたのが、セディショナリーズやコム・デ・ギャルソン、アンダーカバーといったブランドであった。服装にこだわることにむしろ抵抗感を感じていた神田は、この友人によって、「ファッションがむしろ文学などと同じ側にあること」に気づかされたという。

 神田は、自らの作る服を「アンチファッション」と命名している。「うしろゆびさされちゃうみたいな服をつくってみたい」(氏のTwitterより)という氏はしかし、服を(より正確に言うならば、「服のイメージ」を見せること、流通させることの意義そのものに、挑戦し続けているようにも思われる。一般の乗客も乗り降りする通勤電車内でアクシデント的にファッションショーを開催したこともあれば、東京タワーを舞台に、AV女優をモデルにしてコレクションを行ったこともある。今秋オープン予定の初の直営店は、普通のオンリーショップではなくて、なんとスナックである。

 この8月からは、フォトグラファー浅田政志との共同プロジェクト「卒業写真の宿題」がスタートする。自身の家族を使った「コスプレ写真」によって、「記念日のファミリースナップ」という概念をズラしつつ再考してみせた浅田。ゆるい雰囲気の演出やベタなモティーフ使いによって、逆説的に「写真」や「ファッション」の枠組を浮かび上がらせ、その限界に揺すぶりをかけるという点で、浅田と神田の作品には通ずるものがあるだろう。

 真摯な情熱と思想が込められつつも、常に人を瞠目させるようなコンセプトが仕掛けられているkeisuke kanda。彼が次にどんなやり方で私たちを驚かせたり、笑わせたりしてくれるのかを、ドキドキしながら待ちたいと思う。

 

Levi’sのヴィンテージを模しつつ、ランダムなハンドペイントの大きめドット、粗い手縫いのステッチ、裏に当てられたツギハギなど、ファニーなディテールを加えたデニムパンツ。
手縫いのジーパン(水玉) ¥36,750
keisuke kanda(candyrock)
胸に日の丸の輝く、赤い糸の刺し子ステッチ入りTシャツ。とかく過剰な意味を持たされがちなシンボルだからこそ、さらりと小粋に着こなしたい。
手縫いのTシャツ(日の丸) ¥17,850
keisuke kanda(candyrock)
セレクトショップ「ミキリハッシン」の別注素材によるジャケット。紋切り型の「学生服」イメージを、ミルク色のボタンやハンドステッチ、ラメ入りアイボリーの布地を使うことでずらしたデザイン。

学ラン ¥47,250
keisuke kanda × ミキリハッシン(ミキリハッシン)
ブランドアイコンである「ぞうさん」のマーク入りのカーディガン。白いハンドステッチと、身頃ごとに切り替えられた布地が目を引く。手首のリブが左右で微妙に違うというこだわりも。
手縫いのカーディガン(黒色々) ¥35,700
keisuke kanda(candyrock)
下駄(刺し子 赤):かつてのバンカラ学生か、果てまたフーテンの寅さんか、といった風体の下駄は、桐の台に二枚歯の本格仕様。「あえて下駄」の諧謔的な反骨精神で。
下駄(刺し子 赤) ¥18,900
keisuke kanda(candyrock)
「ダサくてはずかしい」アイテムの代表格だったスクールジャージに、白いハンドステッチや微妙にトーンの違う布地による切り替えなど、keisuke kanda流の再解釈を施したブルゾン。
一点モノジャージ上 参考商品
keisuke kanda(candyrock)

 

小澤京子/Kyoko Ozawa 1976年、群馬県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター(UTCP)」特任研究員。

 

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