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気遣いの商品学 – 第1回 タブメーカー(ニチバン)

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第1回タブメーカー(ニチバン)

 

商品の包装や仮留めに使うテープの端を折り返し、剥がす人がすぐにテープを摘めるように「タブ」を作る、何気ない気遣い。何時の頃からか世間に広まったが、昨年12 月に簡便に「タブ」を作る装置が発売になった。それが生まれた理由とは?
Photography /Satoru naito Interview and text/JQR

 

「タブメーカー」を開発したテープ事業本部の木下裕司シニアマネージャー(左)と、開発の陣頭に立ったテープ開発部の佐藤正則さん。

 


テープカッター
タブメーカーTM
希望小売価格(本体価格)
2100 円

JQR:(単刀直入に)なぜ「タブ」を作る機能を持つテープカッターを開発しようと考えたのですか?

佐藤:買い物をしたとき、包装にわざわざ折り返し(タブ)を作ったテープを使う店が増えているな、と感じたのがきっかけです。2 年ほど前から商品化に着手しました。

JQR: 手で折り返しを作るのは面倒なので、ニーズがあると?

佐藤:サービスの一環ですが、簡単にタブが作れれば、気配りという文化が広まるとの思いもあり・・・・・・。

木下:タブをよく目にするようになったのは、大手カジュアル衣料品店が取り入れられてからでしょうか。もちろんそれ以前からあって、例えば冷蔵庫のプラスチックの棚は輸送中に動かないようにテープで留められていますが、それらはタブが折られています。

JQR: 当時は「タブ」にトライしなかったのですか?

木下:チャレンジしたことは過去に何回かありました。ですが、いずれも完成度の低いものしかできなかったんです。こんなふうにやればタブができるとは、なんとなく分かってはいたんですが。

JQR: 過去に何回か失敗しているということですね。それでも企画が通った?

佐藤:それなりに時間がかかるというイメージを持たれていたのですが、シンプルな機構にして短縮できるとアピールして。開発チームで侃々諤々やりながら試作品を作っていました。

木下:開発テーマは、通常は事業本部が市場調査をして決定していくのですが、これについては開発部主導で、ある程度のコンセンサスを得ながらテーマアップしましょうよ、と。

JQR: なるほど。製品化の難しかった点はどこでしょうか?

佐藤:何よりタブができる成功率ですね。「タブメーカー」は、業務や店舗で使われることを想定しているので、忙しい時にパッと取れることが肝心です。失敗すると面倒なことになるので、失敗できないんです。

JQR: 成功率を上げないと、この商品は広まらないと。目標の成功率は?

佐藤:95%を目指してスタートしましたが、出来上がった製品は98%の成功率を達成しています。


テープの先端をつまむ。規格にあったテープを使用する。

テープを引き出し、可動枕に貼り付け可動枕をカッターまで移動させる。

ひねる要領でテープをカットすると、テープの先端にタブができる。

分からないメカニズムをひたすら手作業で追い続ける

木下:引っ張ったテープをどこかで戻してくっつける、とイメージはとてもシンプルですが、これを実現するのが難しかったですね。様々な機構を作って検討しましたが、最終的にバネを使ったものを採用しました。

佐藤:テープを切った後に、残りのテープの先端は可動枕に接着したままバネの力で“ パチン” と戻るのですが、この戻る時にテープが盛り上がってくっつき、これがタブになります。問題は、この盛り上がりが必ず上に来なければタブができないことです。

JQR: 下に行ってしまっては糊のない面が合わさるだけで、タブはできませんね。

佐藤:試作品1仕様で5 万回は切りました。週末も家に持ち帰って黙々と切ってましたね。テープの屑がひと山もふた山もできて(笑)。

木下:テープとの組み合わせにもよります。上向きにタブができるメカニズムがはっきり分からないので、実際にやってみるしかないんですね。

佐藤:バネで引き戻す機構に決まってからも、チューニングするのに散々テープを切りました。例えば、枕の部分にテープが付き過ぎてはダメですが、剥がれる必要もある。では、どっちを優先するの? と。

JQR: タブができる決定的なポイントは?

木下:可動する枕の材質とその可動枕を受ける固定枕の形状と角度です。それによって、テープが上に膨らみます。

佐藤:受けの枕の角度は、感覚的に見つける作業でした。違う角度のものをいくつかつくり、それに可動枕の粘着具合を組み合わせ、試行錯誤の繰り返しです。最後はチーム全員でひたすらテープを切って、ボードに数字を書いていく作業です。何回切って何回成功したか、という実績値で仕様を決定しました。また、可動枕に使うゴムは、テープをしっかり付けながら、持ち上げる時に軽く剥がれる必要があります。

JQR: 真逆の機能をひとつの素材に求めるのですか?

木下:粘着テープは矛盾の連続。良く着いてきれいに剥がれる。なので、我々にとっては当たり前の要求品質。テープ屋の宿命ですね。

JQR: 満を持しての製品投入。反響はいかがでしょうか?

木下:昨年の12 月中旬に発売したところ、評判はよかったのですが、思ったほど売り上げにつながらずヒヤヒヤしていました。2 月になってようやくご発注頂ける台数も増えてきて、ホッとしています。

 

問い合わせ
ニチバン株式会社
お客様相談室 0120-377218
http://www.nichiban.co.jp/

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