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世界で最も細かく見える電子顕微鏡

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原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の外観

原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の外観

世界最高水準の電子顕微鏡

 日立製作所は、内閣府の最先端研究開発支援プログラムの助成により2010年から開発を進めていた加速電圧1.2メガボルトの「原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡」を完成させ、世界最高となる分解能※43ピコメートル(1ピコメートルは1兆分の1メートル)を実現した。
 最大の特長は、球面収差補正器を超高圧の電子顕微鏡として世界で初めて搭載したことだ。球面収差とはレンズの中心と離れたところを通る光や電子の焦点距離が異なることで、これが焦点ボケの原因となる。通常、光学顕微鏡では、凸レンズと凹レンズを組み合わせて補正を行うが、顕微鏡自体の安定性が求められるため、大型で超高圧の電子顕微鏡には搭載困難と思われていた。そこで、エネルギーのばらつきを抑えた1.2メガボルトの電子ビームを長時間安定して放出する電子銃や高圧電源システムを開発。さらに、分解能を下げる要因となる振動や音響、磁場などの影響を極力受けない電子顕微鏡専用の建屋を建てた。

※分解能=装置などで対象を測定または識別できる解像度の高さ

青色発光ダイオードなどに使われるGaN(窒化ガリウム)結晶を電子顕微鏡で観察したもの。44ピコメートル間隔の赤いGa原子が2つ並んでいるのが確認でき、試料の構造や電磁場を原子レベルで観察、計測できることを示す

青色発光ダイオードなどに使われるGaN(窒化ガリウム)結晶を電子顕微鏡で観察したもの。44ピコメートル間隔の赤いGa原子が2つ並んでいるのが確認でき、試料の構造や電磁場を原子レベルで観察、計測できることを示す

原子レベルを解析して新素材の開発に応用

「とはいえ、開発にあたって奇抜なことはしていません。我が社が持ちうる技術を結集して、基礎的な部分や難しい部分に丁寧に取り組んだことが大きいです。また、細かい部品などは、日本国内外約600社から協力を得て調達しました。地方にある中小企業にも、世界最高レベルのものを作っているところがたくさんあります」と基礎研究センタの品田博之氏は語る。

電子顕微鏡の全体像の模型。高さ18メートルの建物を含む大掛かりな施設となっている

電子顕微鏡の全体像の模型。高さ18メートルの建物を含む大掛かりな施設となっている

 4年間の開発の間には、開発面以外でも苦労があった。2011年には、東日本大震災で茨城県日立市の部品工場が津波で被災。さらに、2012年にはプロジェクトの中心研究者であり、ノーベル賞の有力候補とも言われた外村彰博士、ベテランエンジニアの松井功氏の逝去といった不幸もあった。
「プロジェクトを白紙に戻す話も出ましたが、外村博士の遺志を継いで続行し、2014年3月に無事に完成した時は感無量でした」
 今後、この電子顕微鏡を使った解析は、電気自動車の大容量軽量バッテリーのような省エネ、省資源にむけた材料の開発や、生命科学の分野などにも応用されていく予定だ。

文/JQR編集部

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