美酒礼賛 – ワイングラスで飲みたい日本酒 [vol.9] – 日高見見 大吟醸

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Bishu 1

 

静かでブレない主張が際立つ

宮城県石巻市。東日本大震災によって大きな被害を受けたこの町に、平孝酒造は厳然と建つ。蔵を訪れた日は、裏庭で重機がせわしなく動き、蔵内まで工事の音が響いていた。この蔵も津波の脅威にさらされたのだ。だが、平井孝浩社長の顔は一寸の曇りもなく、優しい笑顔を湛えていた。そう、この酒のように。

地元でも少々手に入りにくい「日高見 大吟醸」は特別限定酒。大吟醸というと香りが強いものが多いが、こちらはとても穏やか。食中酒として長時間楽しむことができる酒だ。洋梨やりんごを思わせるフルーティな飲み口がずっと続くかといったらそうではなく、酸味、辛味へとゆっくりシフトする。ほどよい米感とキレの良さが、飲みやすさをさらに助長している。妙なひっかかりは一切なく、酒米の王・山田錦らしい美しい酒質に仕上がった完成度の高い逸品だ。

地元では「魚だったら『日高見』だっちゃ!」と言うほど、この蔵の酒は魚に合う。脂が存分に乗ったブリやサバの刺身、ギンダラの西京漬けなんていうのもいいだろう。今の季節なら焼き牡蠣を合わせてみたい。プルンと焼き上がった熱々の牡蠣に、ほんの少しだけレモンをキュッ。濃厚な旨味が舌に残っているうちに、軽く冷やした「日高見 大吟醸」を流し入れる・・・。考えただけで喉が鳴る。飲みやすさもあいまって、「気づいたら空っぽ」なんてことも十分にありえそうだ。

ビギナーから酒通までを虜にする「日高見」。蔵の工事もようやく終わり、今年も酒造りがいよいよ始まった。

「自分達より大変な方々はいっぱいいる。だから弱音なんて吐いていられない」

と平井社長。

震災後のスローガンは「がんばろう」ではなく「負けない」。この思いがどう酒質に表れるのか。初搾りが待ち遠しい。

 

日高見見 大吟醸
●アルコール度数:17~18度
●精米歩合:40%
●アミノ酸度:1.4
●日本酒度:+6
●酸度:1.4
●使用米:播州山田錦
●容量:720ml
●価格:3,262円(税込)

平孝酒造
宮城県 石巻市清水町1丁目5-3
0225-22-0161

●文/葉石かおり(きき酒師) 写真/長尾 迪

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