美酒礼賛 – ワイングラスで飲みたい日本酒 [vol.7] – 獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分

Decrease Font Size Increase Font Size Text Size Print This Page

Bishu 1

 

時間をかけ“味わう”ために醸された酒

衝撃的。エレガントな味わいにおよそ似つかわしくない言葉だが、この酒を飲んだ時の第一印象は、まさにその一言だった。訪れた当時の旭酒造は、山の斜面に沿うようにして建つ山間の小さな酒蔵といった風。杜氏を筆頭に蔵人も皆若く、いい“気”が蔵中を覆っていた。一通り蔵を見た後、試飲室で出されたのは蛇の目が入った猪口ではなく、よく磨かれたワイングラス。そう、ワイングラスで日本酒を楽しむ術は、この蔵で伝授していただいたのだ。

144時間という気が遠くなりそうな時間をかけ、ビーズ状になった山田錦で醸された味は、並ならぬ透明感に満ち溢れている。開栓した瞬間から南国フルーツを思わせる芳しい香りが立ち、その時点から期待で胸が熱くなる。舌に酒が乗った瞬間、氷が解けていくようすーっと甘酸っぱさが広がり、その後、ゆっくりと辛味が顔を出す。甘、酸、辛の三味の奏でるハーモニーの美しさに、言葉を失う人も少なくないはずだ。高精白の米で醸した酒は味がないと言う輩もいるが、そんなことはない。喉を通った後にスッと鼻に抜ける甘味と、旨味は米そのものである。

この酒は「これまで外に出なかった米の新たな魅力を引き出した」と言ってもいいだろう。女性が化粧で変わるよう、酒も磨きと造り次第で幾通りにも変化するということを、この酒が証明してくれたのだ。

主役級の酒に合わせたい肴は、何といってもふぐ。繊細で淡泊なふぐの味を壊すことなく、白身のおいしさを引き出す。フルーツのような香りに合わせ、手羽先のマーマレード煮、りんごとさつまいものサラダ、たことキウイのマリネといったフルーツを使った料理との相性もいい。基本は素材の味を生かしたシンプルな料理と良く合う。

最後に一言。「獺祭」はグビグビ飲む酒ではない。時間と手間をかけて造った蔵人の思いを汲むよう、じっくりと味わう酒である。スローライフが求められる今、こういう酒を飲んで欲しい。

 

獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分
●アルコール度数:16度
●精米歩合:23%
●アミノ酸度:非公開
●日本酒度:非公開
●酸度:非公開
●米:山田錦
●容量:720ml
●価格:5150円(税込)

 

旭酒造
山口県岩国市周東町獺越2167-4
☎0827-86-0120
http://www.asahishuzo.ne.jp/index.php

 

文/葉石かおり(きき酒師) 写真/長尾 迪

この記事の感想
  • とてもおもしろく役に立った (0)
  • おもしろかった (0)
  • 役に立った (0)
  • つまらなかった (0)