美酒礼賛 – ワイングラスで飲みたい日本酒 [vol.15] – 黒澤明

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Bishu 1

 

“世界の黒澤”にふさわしい濃厚で旨味のある酒

 本来、日本酒は米、水だけで造られたピュアな飲み物だった。しかし第二次世界大戦後、原料となる米が不足したことで事情が変わってしまった。水で希釈した醸造アルコールや酸味料、グルタミンソーダを加えた“三増酒”と呼ばれるまがい品が登場したのだ。安価な三増酒は瞬く間に売れ行きを伸ばし、純米酒の市場を脅かした。そんな状況にあっても信念を曲げなかったのが、仁井田本家である。1711年の創業から「酒は健康に良い飲み物でなければならない」と、自然米100%、天然水100%、純米100%の酒造りを行っている。

『酒・黒澤明』は、故・黒澤明氏の生誕百年を記念して造られた日本酒。そんな華々しい折に、醸造の指名を受けたのが同社であった。

 重厚感のあるボトルに描かれた文字は黒澤氏の直筆。力強く、躍動感のある文字に合わせるかのように、味わいも相当なパンチ力がある。昔ながらの山廃仕込みならではの濃厚な旨味にあふれ、それを支えるように酸味と甘味がバランス良く調和する。わずかに山吹色を帯びた色は、光に当てるとさらにきらめき、妖艶なまでの美しさを放つ。華やかさというよりも、いぶし銀を思わせる静かなトーンがゆっくりと続く。そんなどっしりとした酒である。

 飲用温度は非常に広い。ワイングラスで飲むなら、常温から10度くらいが望ましい。冷やしすぎると、豊かな米の旨味が半減してしまう。燗もまたうまい。多少熱めに燗をつけてもへたることがなく、それぞれの温度帯で違った表情を見せてくれるのが嬉しい。

 合わせる料理は、濃いめの味付けがいい。すき焼きや、角煮といった和風のものから、レバーペーストや豚のリエット、果ては中華料理までストライクゾーンは意外にも広めだ。食中酒としての可能性は無限大。これを飲まずして、日本酒は語れない。

黒澤明
●アルコール度数:15度
●精米歩合:70%
●日本酒:+1 
●酸度:1.8
●アミノ酸度:1.7
●米:トヨニシキ(国産有機米100%)
●容量:750ml
●価格:5,250円(税込)

仁井田本家
福島県郡山市田村町金沢字高屋敷 139 番地
0120-552-313
http://www.kinpou.co.jp/

●文/葉石かおり(きき酒師) 写真/長尾 迪

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