美酒礼賛 – ワイングラスで飲みたい日本酒 [vol.12] – 豊香 純米原酒 生一本

Decrease Font Size Increase Font Size Text Size Print This Page

 

Bishu 1

 

若き蔵人のセンスが生きる酒

先月に引き続き、酒の王・豊島屋のもう一つのブランド「豊香」を紹介である。元々、この蔵の主要ブランドは「神渡」だったが、近年になり、限定流通の「豊香」を世に放った。“米の旨味を引き出す低温発酵と、蔵人独自のデータに基づいた酒造り”をモットーに、若い感性を生かして醸された酒は、またたく間に若者から支持され、「神渡」と並ぶ人気となる。余計な装飾のないスッキリとしたラベルに、揺らぎのない蔵元の自信を感じる。

数種あるタイプの中で、蔵元がセレクトしたのが「豊香純米原酒生一本」。グラスに注いだ瞬間、丁寧に造られた酒だけが持つ妖艶なまでの艶と、熟れた果実を思わせる芳しい香りに圧倒される。みずみずしさにあふれ、どんな温度帯でもへたることがないのが特徴的だ。最初に感じるのは甘味。酸味へとゆっくりバトンタッチしたかと思うと、さらに最終走者の辛味へとバトンが渡されてゆく。原酒でありながら、ツンとしたアルコール感がなく、大吟醸クラスの透明感がある。コストパフォーマンスに長けた寛容な味わいは、料理に対しても柔軟に対応してくれる。

あふれんばかりの果実味に合わせたいのが、千切りりんごと鯛のマリネだ。酸味と果実味が口中で一つになり、双方のポテンシャルを最大限に発揮させてくれる。少し変わったところでは、ホタテのフリットの野沢菜タルタルソース添えなんていうのもいい。蔵がある長野県の名物・野沢菜をピクルス代わりにタルタルソース風に仕立て、それを熱々のホタテのフリットにかける。これがまた盃が見ている間に空になるほど美味しい。若き血潮が流れた酒は、料理のジャンルを選ばないのだ。

時代の風に乗った「豊香」の逆襲はまだまだ続く。“地酒”という域にとどまることなく、これから大きなステージで花を咲かせるに違いない。

豊香 純米原酒 生一本
●アルコール度数:17度
●精米歩合:70%
●日本酒度:+2
●酸度:1.7
●米:契約栽培米ヨネシロ、しらかば錦
●容量:720ml
●価格:1155円(税込)

豊島屋
長野県岡谷市本町3-9-1
0266-23-1123
http://jizake.miwatari.jp/

●文/葉石かおり(きき酒師) 写真/長尾 迪

この記事の感想
  • とてもおもしろく役に立った (3)
  • つまらなかった (1)
  • 役に立った (0)
  • おもしろかった (0)