私と日本 〜モダンは伝統にあり〜 [vo.8] 日本人はエキセントリック?

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Japanandme 1

 

外国人の眼に映る日本とは

日本では流行の移り変わりが早い。

スワロフスキーのラインストーンで飾り立てた携帯電話に始まり、様々なロリータファッションに至るまで、初来日で原宿や渋谷を散策する外国人を驚かせるものは多い。三色に塗り分けた上にイミテーションダイヤをきらめかせたネイルにも、緑、白、青に染めた髪にも。他の国では考えられない光景だ。

なぜ驚くのか?西洋は、虚飾を排した簡素の同義語である「禅」や「侘び寂び」を通し、日本の美学をとらえているからだ。外国人にとって、赤や金といった派手な色彩に溢れるもの、キラキラしたものはすべて中国的なのだ。

これは、仏教学者である鈴木大拙が、明治時代(1868~1912)に禅の思想を海外に紹介したことに端を発する。鈴木は「侘び寂び」という表現を用いて日本文化を説明した。昭和時代(1926~1989)になると、あるドイツ人建築家が簡素そのものの建築様式を特徴とする桂離宮を西洋に紹介し、「これこそ日本の美学の真髄である」と宣言した。

こうして外国人にとって、日本的とは簡素、ミニマリズム、ナチュラルを意味することになった。

しかしながら、よくよく見ると…

京都に簡素な桂離宮が造営された時代に、日光では東照宮が建設されていた。後者は極彩色に塗られ、鳥や花などの彫刻でたっぷりと装飾されている。実はこうした「過剰装飾」の傾向は、昔から日本に存在していたのである。

この「過剰装飾」は、武士の兜にも、男性や女性の着物のきらびやかな柄や色彩にも、女性の髪型や髪飾りにも、男性の被り物にも見ることができる。日本のあちらこちらの祭りの際に決って登場する、艶やかな錦で飾られた大きな山だ車しも忘れてはならない。

日本の美術史家である辻惟雄が「結局のところ、日本人は昔から奇抜なものを愛好していた」と述べる所ゆえん以である。これでもかと装飾に凝る文化と、これでもかと装飾をそぎ落とす文化が共存しているのだ!

日本人は「自分たちは似たり寄ったりで無個性だ」とよく言うが、長年この国に暮らす私はこれをもはや信じない。それどころか、国民がこれほど多様な好みと考え方を持つ国はほかに見たことがない。

一方、フランスは

フランスと比較すると、違いは驚くほどだ。フランスでは格別に簡素ということはない。簡素は貧相と同一視されている。しかし、目を奪うような派手な装飾もない。隣国の王たちに見せつけるためにルイ14世が造営したヴェルサイユ宮殿は別として。

そうだ、フランスでは「中庸」が好まれるのだ。それゆえ、私たちフランス人は日本人と比べると嗜好はそれほど多様ではないかもしれない。装飾の好みにおいてのみならず、感情や知覚の表現においてもフランスでは中庸がよしとされる。

フランスではこれが独特の流儀となっている。エキセントリックを避けるためか、否定形で考えを表明するのだ。「暑いですね」とは言わずに、「寒くはないですね」と言う。「寒い」と言う代わりに「暑くはない」と言う。料理についても、「これは美味しい」とは言わずに「悪くはないね」と言うのだ。

国が違えば風習も変わる。日本がこれからもエキセントリックであり続けることを願ってやまない。

 

フランソワーズ・モレシャン (ファッション・エッセイスト)
1936年、パリ、モンパルナスに生まれる。ソルボンヌ大学日本語学科を経て1958年に来日。NHK 「楽しいフランス語」講師やお茶の水女子大学フランス語講師などを務め1964年帰国。1974年にシャネル美容部長として再来日。フランス語講師、テレビタレント、作家、ファッションコーディネーターとして活躍。2004年に長年の日仏文化交流の功績によりフランス政府から「レジオン・ドヌール勲章」を叙勲。共立女子大学客員教授。フランス政府対外貿易顧問。外地在留フランス人評議会北アジア代表。金沢21世紀美術館の国際アドバイ ザー。石川県観光大使を務める。

千秋育子(イラストレーター)
愛すべきヒーリングアートの第一人者。書道七段を活かしたカリグラフィはじめ、イラスト、エッセイなどはどれも温かさに溢れ、手に取る人を和やかにする。アランデュカス氏大阪初のプロデュースレストラン「ル・コントロール・ド・ブノア」店内画や、エンジャパン本社内の壁画、その他、イラスト、ブランドマーク、ウォールペイント、エッセイなど、幅広い分野での作品多数。また、各都道府県の名所を網羅したジャパントランプ(日本政府観光局サポート)始め、シンガポール政府観光局サブブランドマーク制作、インドネシアトランプの制作と、アジア圏で幅広い活動を展開中。
http://www.sensyuyasuko.com/

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