師匠を喜ばせるネタとは!?

志ら乃劇場 - 第七席

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Shirano

真打ち昇進のパーティーを開いた。場所は東京會舘。初めてここのカレーを食べた時「これがうまいカレーだ」と心底思ったことをよく覚えている。東京會舘は多くの先輩たちもパーティーなどで使用した場所でもあり、また次に真打ち昇進をされる談修兄さんもこの場所を使う。立川流の昇進パーティーではお馴染の場所だ。パーティーを開く目的は、自分自身が昇進したことを多くの人に知ってもらうということがメインである。しかしメインということは他にもいろいろあるということ。その中の一つに「自分の師匠を喜ばせる」というものがある。つまり、私であれば師匠志らくを喜ばせるということだ。

キウイ兄さんが昇進のパーティーを開いた時、キウイ兄さんの師匠である家元立川談志は体調が芳しくなく、会場にはお見えにならなかった。しかしキウイ兄さんは映画が大好きな家元を喜ばせようと、活弁師の坂本頼光さんを余興で呼んでいた。無声にした小津映画の映像を使い、アテレコで「立川キウイという人間が真打ちになったらしい」というような世間話をしている場面に変えるという、素晴らしい芸を披露された。織り込まれているネタが笑えるというのはもちろんだが、何が凄いかというと、小津映画に出ている役者のモノマネが抜群にうまいのだ。私の師匠志らくも小津映画が大好きだ。だから、私はこの活弁を師匠がどういう感じで見ているのかが気になりずっと伺っていた。最初はあまり興味を示していなかった師匠志らくではあったが、途中から食い入るように頼光さんのネタを見ていた。後日独演会のパンフレットに、「坂本頼光さんを引っ張って来た事は褒めてやる」というような内容のことを書いていた。このことは私の記憶に深く刻まれた。

さて自分の番だ。師匠志らくは歌ネタが好きだ。さだまさしさんの防人の歌に合わせて「芝浜」の全てを語るというネタも自身でこしらえ高座でやるし、落語の中に突然変な歌を盛り込んだりするのがとても好きだ。そんなことを考えているうちに、ある一人の芸人が頭によぎった。それはマキタスポーツさんだった。テレビなどにもよく出ていらっしゃるので、ご存知の方も多いだろうが、歌ネタを中心としたギター漫談をやられている。尾崎豊さんの歌を、日本古来の「音頭」の調子に合わせて歌うネタなどは、会場が必ず一体となり爆笑させられる。そして、そもそも歌が上手い。オールスター芸能人歌がうまい王座決定戦スペシャルで、優勝するほどの歌唱力なのだ。上手い人がふざけたことをやるのだからもう叶わない。本物の芸。余興の時間になり、マキタさんのネタが始まるとデジャブか?

という光景が広がった。最初は舞台を見ていなかった師匠が、段々食い入るように見始めた。そして、ネタを終えテーブルに戻ったマキタさんのところへ師匠が近づき、声を掛けていた。私も慌ててそこへ混ざると、師匠がマキタさんへ「今度落語会のゲストに……」と。

師匠を喜ばせる事ができた!

と思わずニヤッとした。

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